ミラノ万博で金賞を受賞した「日本館」その中身は?

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 10月末に閉幕したミラノ万博。会場の正面入り口からもっとも遠い位置に配置された「日本館」が他のパビリオンを抑え圧倒的な人気だったという。最長で9時間待ちを記録したという。30日には展示館賞が発表され、日本館は展示デザイン部門で金賞を受賞した。イタリア人を虜にした日本館、その中身を日本の皆さんにもお届しよう。

■テーマパークのような演出

 日本館の外観は、岩手県産のカラマツ集成材約1万7000本を、釘を使わずに組んだ“立体木格子”で囲まれている。

 館内は、書家の紫舟(ししゅう)氏による書画がスクリーンに映し出される「プロローグ」なる部屋から始まる。人間と自然の共生の難しさを訴えているのだそうだ。

書家の紫舟氏による書画

 第1シーンヘ。「ハーモニー」という真っ暗な広い部屋に入ると、プロジェクション・マッピングで、水田や魚、エビ漁などが次々と映し出され、入館者から感嘆の声がもれた。

「暗い部屋に入ると、行列を作った外のことを忘れるみたいで、よく“すごくきれいだった”と声をかけていただきます」

 と、こちらは30代の女性アテンダント。ここでは日本の食の産地を再現しながら、それを育む日本の自然や四季の移り変わりをアピールしているという。

 続く第2シーンは、押し花が展示された石畳風の回廊を抜けて、「ダイバーシティ」という部屋につながる。ちなみに、14種類の押し花はそれぞれ異なった香りを放ち、各地の四季を象徴しているという。ダイバーシティは中央に“滝”があり、日本の食材や料理などを映した1000を超えるという写真が次々と流れ落ち、画像に触れるとスマホに取り込める仕組みだ。

「レガシー」という廊下に抜けると、「一汁三菜」「発酵・天日干し」「出汁・うま味」など日本の伝統食を彩る食材や食品が、食玩という精巧な模型となって壁面に展示、そのしつらえ方まで示されている。また、小さな子供の目線の高さに日本の農村風景がミニチュア模型で再現されていたりと、工夫が凝らされていた。

 次に「イノベーション」と題された第3シーンヘ。ここでは05年の「愛・地球博」で使われたキャラクター、モリゾーとキッコロが登場し、気候変動や途上国の農業支援など、地球規模の食の課題に日本がどう取り組んでいるかが、触れると情報が浮かび上がる地球儀などを通じて示される。

 第4シーン「クールジャパン・ギャラリー」は、日本各地の伝統工芸に最新のデザインを施した食器を展示。経産省の管轄である。

 そして最後が、第5シーン「ライブ・パフォーマンス・シアター」。ダイニングテーブル風の客席に着席して、男女2人が先導する15分ほどのショーを見ながら、箸を手に取って、テーブル上に次々と現れる映像の懐石料理を味わうのだ。

第5シーン「ライブ・パフォーマンス・シアター」

「イタリア人は和食に、寿司やラーメンなど単品のイメージを抱いている人が多く、“コースの料理があるんだ”と驚く方もいます。生魚ばかり食べていると思っている人が“日本では肉も魚も野菜もバランスよく食べているんだ”と驚かれることもありますね」

 と語るのは20代の女性アテンダント。

 ところで、アテンダントの数も日本人だけで100人超、イタリア人を含めると200人超と、全パビリオン中で圧倒的な数だとか。それが滝川クリステルのあの言葉につながっているそうで、「日本館」の陳列区域政府代表を務める加藤辰也氏は、

「日本の“おもてなし”で快適にお迎えしている」

 そう強調すると同時に、

「イタリアにはテーマパークがあまりないから、期待値を含めて興味を持たれているのではないか」

 と語る。たしかに、展示中心の他パビリオンにくらべ、日本館はアナログと最新のテクノロジーがうまく組み合わされ、テーマパークに通じる演出が施されているのは間違いない。

■フードコートが大賑わい

 こうしてひと通り展示を観終った入館者を、レストランが待ち構えている。京懐石の美濃吉のほか、フードコートと呼ばれるエリアに、CoCo壱番屋、サガミ、京樽、人形町今半の4軒が連なっていた。その脇にイベント広場がある。

「農水省は20年までに、日本の農林水産物の輸出を現在の6000億円から1兆円に増やす目標です。それには、食に関して保守的なヨーロッパにも、日本の食材を売り込む必要があります。その点、この万博では日本の食材について、多くの特例が認められ、よい前例になっています」

 そう語る加藤政府代表が具体例として挙げるのは、

「日本の和牛は4カ所の屠場のものしかヨーロッパに輸出できなかったのが、美濃吉のステーキに、それ以外の産地の肉を使うことが認められた。イベント広場でも、禁止されていた日本産の鰹節が使えています」

 広報の尾高氏によれば、山口県のイベントでは、イタリアでは「毒魚」として禁じられているフグの調理が認められたという。

 また、フードコートは大賑わいで、座席数は160だが、1日のレジ数は2500~4000だという。大変な活況で、長時間待っても満足したと語る来場者が多かったそうだ。

「特集 イタリア人が行列9時間! 参加140カ国中の断トツ! ミラノ万博『日本館』が圧倒的な人気になった理由」より

週刊新潮 2015年10月29日号掲載

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