イスラム国も愛用でトバッチリ困惑の「トヨタ」

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「Killing A Toyota(トヨタを殺す)」という物騒な企画を、英BBCが人気テレビ番組で行ったことがある。

「年代物のトヨタのピックアップトラックを立木にぶつけるのは序の口。巨大な鉄球をぶつける、水中に沈める、果ては廃ビルの屋上に置き、ビルを爆破、瓦礫の中から掘り出す……そんな無茶な企画なのですが、何をやっても部品交換なしで走る。そのタフさは英国人を驚かせました」(英国在住のジャーナリスト)

 満身創痍となりながらも健気に走るその姿をテレビで見たのかどうか、「イスラム国」があまりに多くのトヨタ車を使用している、として米財務省が10月7日までに同社に情報提供を求めたことが明らかになった。

「ネットで公開されているイスラム国の宣伝動画にもランドクルーザーやピックアップのハイラックスといったトヨタ車が多数登場、ある調査は車列の3分の2以上を占めていると報告しています」(国際部記者)

 まさかトヨタもイスラム過激派組織が愛用するとは思いもよらなかったろうが、

「入手経路をすべて把握するなど不可能ですよ」

 とは、軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏。

「徴発はもちろん、盗難車や中古車の購入もあれば、アメリカがイラクに供与し、奪われた戦利品もあるでしょう。しかも中東・アフリカではこの2車種、特にハイラックスヘの信頼は絶大で数も多い。住民がバスなど日常の足として使用する他、武装組織は荷台に重機関銃等を据え、『マッドマックス』に出てくるような戦闘用車両として使用します。こうした車両を軍事用語で“テクニカル”と言いますが、現地では“トヨタ”と呼ばれるほどポピュラーです」

 日本の中古車を中東・アフリカ地域へ輸出販売していた元ディーラー氏も言う。

「ドバイ経由で売っても、最終的にどこに行くかなどわかるはずもない。あっちの連中は車体番号を変えるのも平気なんです。それに、外気温が50度を超える中、土漠の悪路を走破し、浅瀬を突っ切るなどしなければならない環境で、車の頑丈さは生死を分けます。使い倒しても壊れないトヨタ車はランドローバーやジープに較べて安いし部品も豊富で仕入れれば売れました」

 万人に愛されるのも無理はないのだ――。

週刊新潮 2015年10月22日号 掲載

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