【詐欺師の素顔】他人様のお金「7億円」を銀座で散財した「オレンジ共済」バカ息子インタビュー

政治週刊新潮 2015年8月6日通巻3000号記念特大号掲載

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 戦後の詐欺事件史の中でも特筆に値するのが、「オレンジ共済」事件である。現職の参院議員・友部達夫氏(故人)その人が、90億円を騙し取り、闇に葬ってしまったという、前代未聞の一件。当時、その金から7億円近くを銀座での豪遊などで蕩尽し、逮捕、実刑判決を受けた次男・百男(ももお)氏(47)が昔を振り返った。

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「今思えば、あの頃は人生舐めていました。不勉強極まりなかったですね」

 こう“反省の弁”を述べるのは百男氏だ。逮捕当時に比べ、幾分スリムになり、鬢には白いものが混じり始めている。もっとも、その髪はソフトなオールバック。事件当時、「カツラだ」と書き立てられた髪型とはずいぶん変わっているが、本人に尋ねると、

「ええ、確かに当時はカツラでしたよ。僕は円形脱毛症だった。でも刑務所に入ったら、自然に髪が生えてきてこうなったんですよ」

 と笑うから、時の流れと生命の不思議さを感じるのである。

■大人気のももちゃん

 事件の発端は1992年。

 社会保険労務士だった達夫氏は、主宰していた「オレンジ共済」で定期預金の募集を開始。本人が95年に参議院議員に当選したこともあって、その信用力と年利7%前後という高利率に2500人が殺到し、約90億円を集めた。

 しかし、既に時代はバブル崩壊後。そんな利率の運用が成り立つはずもなく、経営は破綻。97年、達夫氏や、共済組合の専務理事だった百男氏らが詐欺容疑で逮捕されたのである。

 注目されたのは、その金の行方だった。40億円の使途不明金のうち、一部は達夫氏の政治資金に遣われたと言われたが、何より耳目を集めたのが、百男氏の銀座での散財である。

 彼が常連だった銀座のクラブの元店員が言う。

「うちの店だけでも、週に3日は来ていました。スーツにヴェルサーチのネクタイでビシッときめてくる。10万円のドンペリを一日2~3本空けたり、150万円のロマネコンティを空けたりすることもありました。しかも、支払いは現金でしたから、取りはぐれのない“Aランク”のお客さん。女の子には“ももちゃん”と呼ばれて大人気でした」

 店の「ナンバーワン」ホステスが大好きで、付いただけで100万円のチップをポン。道端で会っただけのクラブママには200万円をポン……。当時の銀座に残した武勇伝は掃いて捨てるほどあるし、また、放蕩ぶりは「夜の世界」に留まらなかった。

 全部で1億円と言われた高級熱帯魚を飼っていたのは話題となったし、事件の被害者弁護団団長を務めた、宇都宮健児弁護士も振り返る。

「百男はF1が大好きでね。三重県の鈴鹿サーキットで開かれる日本グランプリに東京からヘリコプターで乗り付けて観戦していました。しかも、銀座のホステスを引き連れ、チケット一枚23万円の特別席に陣取るという豪勢ぶり。こうした趣味が高じて買ったのが、アイルトン・セナのために作られたレースカー。弁護団はこれを差し押さえて1710万円で売り、被害者への弁済に充てたのです」

 こうした彼の私的流用額は、裁判で認定されただけで6億7000万円。懲役8年の判決が下された。

 一方、懲役10年を食らった父・達夫氏は、

「行きつけは自宅近所のスナックでせいぜい月に数十万円しか遣っていない」(担当だった吉ヶ江治道弁護士)

 と言うから、当時のメディアに「バカ息子」の文字が躍ったのも仕方ないのだ。

 さて、ではその百男氏はかつての罪をどう捉えているのか? 本人は、

「信じてもらえないかもしれませんが、騙すつもりはありませんでした。父も私も、きちんと運用しているから大丈夫だと思っていたんです。でも、騙す意思がなくても結果的に返せなかったんだから、詐欺は詐欺。申し訳なく思っています」

 と、何やら回りくどいものの、自らの責任は認める格好である。しかし、銀座での豪遊について尋ねると、

「あれは接待」

 とおっしゃるのだ。

「政治家、芸能人、弁護士や会計士とも、みんな仕事のために呑んでいたんです。だから“遊び”とは言いたくないんですよね」

「仕事」にしては、ずいぶんと気前良くチップをばら撒いたものであるが、

「今思うともったいないなぁと思いますよ。女性もある程度演技じゃないですか。当時はそれに気付かなかった。愚かですよね。今は社会勉強をして、オモテとウラを見ているから、持ち上げられても嬉しくない。今では、銀座どころかキャバクラにも行きませんよ」

 と、妙な“成長”をアピールするのである。

 そんな百男氏、現在は不動産や自動車のブローカーを生業(なりわい)とするものの、生活は厳しく、知人宅を転々とする身で、楽しみは晩酌のチューハイとのこと。肝心の被害者弁済については、「したいけど、出来ていない」ということだそうだ。

「ワイド特集 週刊新潮3000号を彩った華麗で卑怯な詐欺師たちの顔」より