なぜか疎外されている 「集団的自衛権は合憲」の憲法学者座談会――長尾一紘×百地章×浅野善治

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■迫る中国の軍事的脅威

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 これは鈴木善幸内閣が旧社会党の故・稲葉誠一代議士の「憲法、国際法と集団的自衛権」に関する質問に答えた際の政府見解のことだ。「我が国が、国際法上、このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然であるが、憲法第九条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲に留まるべきものと解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考えている」としている。

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長尾:日本は国際法上は集団的自衛権を保有する。しかし、憲法上、保有するかどうかという点はパスして、行使は禁止されている、としたのです。もしも学生が、試験でこんな論理破綻の答案を書いたら落第ですよ。

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 15日に衆議院で安保関連法案が採決される直前に、安倍総理は「国民の理解が進んでいないのも事実だ。理解が進むように努力を重ねていきたい」と口を滑らせた。果たして、国民の理解はどこまで進んでいるのか。

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百地:国民はやはり、中国の軍事的脅威を感じていると思います。東シナ海では尖閣諸島の領有権を主張し、周辺海域で連日のように領海侵犯を繰り返しており、ガス田では勝手な開発に加えてレーダー基地の設置も進めているという。南シナ海では岩礁を埋め立てて軍事拠点を築き、日本のシーレーンも脅かされています。政府は「外交上の配慮」を盾に、こうした現実を国民に説明しませんが、これこそが集団的自衛権の行使を背景にした安保関連法案の成立を急がねばならない最大の理由です。

浅野:今回の法制は、自衛権の行使について、我が国を防衛するために必要最小限度の範囲に留まっています。自分の家族や子ども、あるいは次世代を担う国民を脅威から守るために、起こり得る様々な事態に対応できるように法整備をしておくのは当然のことです。

長尾:アメリカのある政治学者は、近著で「憲法を護るためには国家の独立が条件。そのためには国防の充実が必要」と述べています。違憲論者には、このような視点も欠けているように思います。

百地:本質的な解決は、憲法9条第2項を改正して軍隊を持つことでしょう。

長尾:その通りです。

浅野:同感です。

百地:私たちを「御用学者」と言う人もいます。でも、政府が我々の議論や学説を採用してくれるなら、幾らでも提供しますよね。

浅野:正しいことは1つで、それは国を守るために何をしなければならないかということ。発言が政府寄りで「御用学者」と呼ばれるならそれで良い。

長尾:仰る通りです。

百地:まあ、人間なんて「御用」がなくなったら終わりですもんね(笑)。

週刊新潮 2015年7月30日号掲載

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