【新国立競技場問題】「安藤忠雄」が弁解する「誤解がある」は通用するか

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〈こんにちは。建築家の安藤忠雄と言いますけど……〉こんな調子で始まった安藤氏の記者会見は、まるでトークショーを見ているかのようだった。でも、これで世間の「誤解」は解けたのか。

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〈写真とらんと、まず聞いてくださいよ〉

〈大阪(の記者が)来たらほっとするわ、俺〉

 7月16日、都内の記者会見場に現れた安藤氏は、満場の記者たちを相手に、テンポよく話し始める。この会見、日本スポーツ振興センター(JSC)の有識者会議(7月7日)を欠席したため、日時を変えて開かれたもの。ご本人によると、大阪で講演会があったことや、ガンの手術を受けたこともあり体調もよくなかったのだと言う。

 安藤氏が続ける。

〈誤解が生じてますが、私が頼まれたのはデザイン案の選定まで。2012年までなんですよ。すべて“安藤さんの責任”というのは、ちょっと分からない。選んだ責任はあるが、2520億円になって(工事費が膨らんだ理由を)私も聞きたい〉

〈私もこれが1300億円というのはどうかなと思いましたが、私はこんな大きなものを作ったことがありませんからね〉

 そして、ザハ氏のデザインについては、

〈非常にダイナミック、斬新で何よりシンボリックだった。2016年(の五輪招致)で負け、20年は勝って欲しいという一部が、あの案を選んだのかも知れない〉

 会見の時間は約30分、用意してきたパネルを前に熱弁すると、足早に会見場を去っていったのである。

■設計会社の責任

 要約すると安藤氏の責任はザハ氏のデザインを選んだこと。建設費が膨らんだ理由は知らない。とはいえ、ザハ案を選んだのは国際協約だから、外すわけにはいかないというものだ。

 だが、会見の様子を見ていた危機管理コンサルタントの田中辰巳氏が言う。

「安藤さんは、わざと軽い口調で話しているみたいでした。こうしたシーンは有名人の会見でも時折見受けます。緊張する場のはずなのに余裕を見せようとしてしまう。追い詰められているわけではない、と言いたいのかも知れませんが、かえって印象を悪くしてしまいかねません。見ていて“これはご本人にプラスになるのかな?”と感じました」

 一方、安藤氏の言い分にも一理あるというのは、建築家の渡辺邦夫氏だ。

「確かに安藤さんはザハ氏のデザインを選んだ責任はありますが、彼だけを悪者にするのは間違っています。問題になっている建築費用のことで言えば、一番良くないのはザハ氏と組んだ日本の設計会社です。基本デザインから設計に入った段階で工事費が膨らまないように手を打つのが彼らの仕事なのです」

 とまれ、どこに責任があるのかよく分からない会見だったのである。

「特集 新聞は報じなかった白紙撤回の水面下! 法螺と二枚舌の『新国立競技場』」より

週刊新潮 2015年7月30日号掲載

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