朝日新聞のソロバンずくで「羽生名人」に電王戦逃亡の濡れ衣!

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 一度でいいから見てみたい、羽生がソフトを負かすとこ――。「笑点」の桂歌丸師匠ではないが、多くの将棋ファンが改めてそう感じたはずだ。最強コンピューターとの決戦に臨むことが期待された羽生善治名人(44)が、“電王戦”への不参加を表明した。大どんでん返しのウラには朝日新聞のソロバン勘定があった。

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 科学の叡智を結集したコンピューターと、棋界にその名を轟かせるトッププロとの真剣勝負――。

 電王戦が装いも新たに再始動すると聞いて、そんな夢の対決に胸を躍らせた方も少なくなかろう。

 6月3日、日本将棋連盟は、“ニコニコ動画”を配信するドワンゴと、新たな電王戦の開催を発表。全棋士が対象のエントリー制で行われ、優勝者はコンピューター同士の戦いを勝ち抜いた最強ソフトと対局するという。しかし、この時すでに不穏な空気が漂い始めていた。

「というのも、連盟会長の谷川浩司九段や、糸谷哲郎竜王ら大物棋士が参加を表明する一方、最注目の羽生名人がエントリーしていなかったからです」

 と、語るのは観戦記者だ。残念ながら、記者の不安は現実のものとなる。ベテラン棋士が明かすには、

「そもそも、ドワンゴ側が今回の電王戦のスポンサーとなる条件として提示したのは、“羽生名人の出場”でした。そのため、連盟は事前に羽生名人の了承を取り付け、出場は確定的だった。しかし、5月28日発売の『週刊新潮』がその事実をスッパ抜くと、朝日の上層部に衝撃が走ったのです」

■名人位に傷

 現在、朝日は毎日新聞と名人戦を共催している。連盟にとっては古くからの大口スポンサーである。

「朝日の将棋担当の記者は、電王戦に羽生名人が出場する可能性について報告を上げていなかったようで……。記事を読んで初めてそのことを知った担当幹部が、連盟に懸念を示しました。朝日側は、もし羽生名人がコンピューターに負ければ、毎日と共に年間3億円近い契約金を払って支えてきた名人位に傷がつくと考えたようです。毎日もそれ以前から難色を示していたため、連盟は窮地に立たされました。結局、ドワンゴ側に頭を下げて、羽生名人の不参加を呑んでもらった格好です」(同)

 結果、18日になって再度、開かれた会見で、連盟とドワンゴは羽生名人の不出場を発表したのである。

 もちろん、このドタバタ劇の最大の被害者が羽生名人なのは明らかだ。こうした経緯が表沙汰にならなかったことが災いし、“敵前逃亡”の汚名を着せられたのだから。ちなみに、竜王戦を主催する読売や、棋王戦の共同通信から連盟への抗議はなかったという。

 将棋ソフトに詳しい武者野勝巳七段によると、

「朝日は01年に“朝日オープン将棋選手権”を創設し、アマ強豪とプロ棋士との対局を実現させて賛否両論の嵐を巻き起こしました。現在は名人戦のスポンサーですから、保守的になるのも理解できる。ただ、仮に羽生名人がコンピューターに負けたとしても、電王戦で将棋への関心が高まって棋界の活性化に繋がるのではないか」

 チェスでは18年前に世界チャンピオンがコンピューターに敗れたが、それによって権威が失墜したわけではない。無論、スポンサーが勝負師から戦いの舞台を奪う道理はなかろう。

「ワイド特集 雨降って地固まらず」より

週刊新潮 2015年7月9日号 掲載

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