「独自硬貨」の鋳造まで始めた「イスラム国」

国際週刊新潮 2015年7月9日号 掲載

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 ジンバブエは自国通貨発行をギブアップしたというのに、過激派組織「イスラム国」は、独自通貨発行のため硬貨鋳造を始めていることが6月23日、判明した。

「金貨2種類、銀貨3種類、銅貨2種類、計7種類の『イスラム・ディナール」硬貨が、ラマダン明けにも流通し始めるかもしれません。1ディナール金貨は139ドル(約1万7000円)、5ディナール金貨は694ドル(約8万5000円)相当だそうで、『アラーの思し召し通りにお金を遣うことに祝福あれ』などと刻印されています。『悪魔のグローバル経済システムからの解放』を謳っていますよ」(国際部記者)

 世界経済から遠ざかるなら寿(ことほ)ぐべきだが、

「支配地域で実際に流通しているのはユーロ、ドル、イラク・ディナールなどです。国家として承認されていない『イスラム国』の通貨が取引に使われることは考えにくい」(同)

 現代イスラム研究センターの宮田律氏は独自通貨発行の理由をこう推察する。

「貨幣は国の象徴です。そのシンボリックな意味が大きいのでしょう。『イスラム国』にはフセイン政権時代のイラクの元財務官僚も参加しています。彼らが提案した可能性がある」

 鋳造のための地金はどうしたのか。

「昨年、『イスラム国』がイラク北部の街モスルを襲撃した際、市内の銀行から現金と地金、合計300億円相当以上を奪っています。同様の行為を各地で行っていますから、充分な量があるのでしょう」(同)

 今回発行されるのは金貨や銀貨で、紙幣はない。

「中東やインドでは、元々金が取引上、重要視されてきました。経済制裁下で現金取引ができないイランはインドと金の現物で取引したと噂されましたし、イスラム・ディナール金貨の価格も現在の金相場を反映しているようです」(同)

 6月30日現在、日本でカナダのメイプルリーフ金貨やオーストリアのウィーン金貨など純度99・99%以上の金貨を購入するとなると、1/10オンス(2・83グラム)貨で税込1万8384円、1/2オンス(14・17グラム)貨で同8万6782円。奇妙に価格が近似するのである。

「古くから金属加工技術の高い地域。純度の高い、質のよい硬貨なら意外に人気が出るかもしれない」(同)

 金投資に「イスラム国」など考えたくもない。