加藤紀子「ラディッシュからパクチーまで30種の有機栽培」/「土いじり」に回帰した「芸能人」の野菜作り

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 華やかな世界に生きる「芸能人」には土いじりへの回帰が増加中だ。

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 以前の私は「野菜は買うもの」と思い込んでいました。それが、2012年にNHKの『月刊やさい通信』という野菜作りの番組に出演したことで、その意識が大転換したんです。

 番組の翌年に結婚してからは、マンションのベランダで大葉とかシシトウなどを遊び半分で作っていました。夫は割高な無農薬野菜を取り寄せて食べているくらいの大の野菜好き。でも、出費がかさむのでいつか自分で作れたら良いなあって思っていたんです。また、私は出産の経験がないので“育てる”という行為に憧れを抱いていたところもありました。

 先の番組出演は1年で終わってしまい、何だか“不完全燃焼”だったのも事実です。というのは、キュウリやナスなどの収穫は楽しいのですが、一方でどうしたら美味しい野菜を育てることができるのか、という点について深く学べなかったところが心残りだったんです。

 番組に協力して頂いた東京・国分寺市の農家の方にそれを相談すると、「だったら、そのまま貸してあげる」と、72平米の畑を引き続き使わせてくれると言うのです。地代は無料で、その代わり、ピーマンやサヤエンドウなど日々の出荷のお手伝いを申し出ました。

 野菜は畑作りから。でも、私は鍬を持つのも初めてで、最初は力の入れどころが分からずおっかなびっくりでした。また、府中の競馬場が近いので馬糞と藁を混ぜた堆肥を頂ける。だから私の畑では化学肥料は使っておらず、畑の地力を生かした有機栽培を実践しています。

 そんなワケで、私の本気の野菜作りはまだ3年目ですが、これまで大根やニンジン、キャベツ、ほうれん草、かぶ、ラディッシュ、パクチー、ニンニクなど、20~30種類くらい作りました。

■ニンジンの甘い香り

 折にふれて教えて頂く農家の方のアドバイスは本当に貴重。キャベツのような大きな葉物の隣にルッコラや水菜を植えると広がった葉で傷がついてしまうとか、白菜を冬の霜から守るには外側の大きな葉を剥いで被せれば良いとか……。昔ながらのノウハウや知識は、忘れないよういつも必ずメモしています。

 畑には、どんなに仕事が忙しくても週に1度は必ず行くようにしています。3~4時間ほどですが、無心になれる土いじりはストレス解消になりますし、足の裏に感じる土のフワフワした感触も気持ち良い。何より、苦労して育てた野菜の味は格別です。ニンジンなんて、切っただけでフワッと甘い香りが立ちますし、市販のものよりずっと味が濃い。調味料での味付けなども必要ないくらいです。お陰で、最近は味覚も鋭くなったのか、外食した時など、無農薬とそうでない野菜の味の区別がつくようになりました。

 嬉しいことに、畑からは夫と2人では食べきれないほどの野菜が収穫できます。大根なら保存がきくように沢庵や切り干し、或いは酢漬けのピクルスにするというように、料理のレシピも増えました。

 野菜作りは、手をかければかけるほど見返りを得られます。キュウリは一つの苗を、別の丈夫な苗に接ぎ木すると病気に強くなるのですが、そういう新たな取り組みも始めました。先人の知恵を学んでの収穫も、醍醐味の一つですね。

「特集 『土いじり』に回帰した『芸能人』の野菜作り PART2」より

週刊新潮 2015年5月21日菖蒲月増大号掲載

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