今秋上場の超大型「ゆうちょ銀行」に潜む不安材料

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 兜町が活気付いている。一時とはいえ、日経平均株価は15年ぶりに2万円台を突破して、証券業界から聞こえてくるのは、年内2万5000円台の声。その起爆剤と目されるのが、今秋上場予定の“超大型株”日本郵政グループ3社だ。なかでも、「ゆうちょ銀行」は史上最高の初値が付くとの前評判も高いが、不安材料は見当たらないのか。

 郵政民営化で、2006年に設立された「ゆうちょ銀行」の支店数は、国内最大のメガバンク・三菱東京UFJ銀行の約4分の1に過ぎない。だが、メガバンク幹部によれば、

「ゆうちょ銀行の支店は234ですが、業務委託先の郵便局が全国に約2万4000ある。さらに貯金残高約179兆円は、三菱東京UFJ銀行の約1.2倍。名実ともに、国内最大の金融機関なのです」

「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命」は、政府が株式を100%保有する日本郵政の完全子会社。日本郵政株の売却益は4兆円以上で、東日本大震災の復興財源に充てられる。

「自民党も上場前に郵政グループ3社、特にゆうちょ銀行の企業価値を高めようと躍起になっています」

 こう語るのは、政治部記者だ。

「自民党で、3月3日に郵政事業に関する特命委員会の初会合が開かれました。そこで一番多かった意見は、ゆうちょ銀行の貯金限度額改定。現在、1口座1000万円超は利子が付きませんが、それを2000万円に引き上げるべきというもの。一方、禁じられている企業などへの大型融資も、解禁すべきとの声が少なくありませんでした」

 自民党は6月中に意見を集約して、政府に答申する予定だ。全国銀行協会は民業圧迫だと猛反対するが、自民党は聞く耳を持とうとはしないのだという。

■「不祥事の多い役所」

 日本郵政グループ3社は昨年10月に11社の主幹事を決め、3月31日には東京証券取引所へ上場を申請した。そこで注目されるのが「ゆうちょ銀行」の初値である。証券会社の幹部も顔をほころばせる。

「史上最高の初値が付くことは間違いありません。東証は100株単位を推奨しているが、1株単位なら87年に上場したNTT株の初値160万円を超えるでしょう」

 新規公開で買えば儲かるのは確実だが、経済ジャーナリストが苦笑する。

「安泰とは言えません。事件が起きたら、株価は瞬く間に下落するはず。旧郵政省時代、各地の郵便局で職員による郵便料金の着服や貯金の横領が相次ぎ、郵政省は“霞が関でもっとも不祥事の多い役所”と揶揄されていましたからね」

 6年前にも、日本郵政グループで4件の横領、詐欺事件が発覚した。被害総額は14億8000万円に上り、総務省と金融庁が業務改善命令を出している。社会部記者が解説するには、

「ゆうちょ銀行の職員が起こした犯罪は、口座を悪用したケースが多い。貯金口座は1億2000万以上あるが、本人確認や名寄せが不十分。親が“無断”で作った子供名義のみならず、故人やペット名義も少なくありません。そうした“不正口座”が、年金詐欺やオレオレ詐欺など犯罪の温床になりかねないのです」

 160万円の初値を付けたNTT株は、その約2カ月後には318万円の高値を付けたが、その後は下がる一方だった。で、ゆうちょ銀行の場合はどうか。

「NTT上場で儲かったのは政府と証券会社。一般投資家の多くが“高値掴み”でババを引かされた。ゆうちょ銀行でも不祥事が明るみに出れば、一般投資家は“いつか来た道”を歩かされる可能性が高いでしょう」(先のジャーナリスト)

 新規公開で株を買えたとしても、長持ちするとボロが出た時に火傷するのだ。

週刊新潮 2015年5月21日菖蒲月増大号 掲載