「東急不動産」社長が「取引業者」から買った大儲けできる土地

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 IT企業が集まる東京・渋谷。その“渋谷の大家さん”といえば、大手の東急不動産である。昨年4月、同社のトップに就任した三枝(さえぐさ)利行氏(56)は、イケメン経営者として知られているが、何とこの年で新婚。そして育児にいそしむ身だ。ところが、三枝氏、夫人の手掛けるビジネスで公私混同が指摘されたり、新社長らしからぬ土地取引にも首を突っ込んでいるという。

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「三枝さんは東急不動産のドンと呼ばれる金指潔会長の愛弟子ともいえる存在で、早くから次のトップと目されていました。4年前には事業創造本部長としていち早く太陽光発電への参入を決めるなど、アグレッシブな手腕が評価される経営者です」(経済部記者)

 その三枝氏は、トップ就任に先立つ昨年2月、20歳も年下の女性と再婚し、秋には子供も生まれている。

「お相手は、都内で不動産会社を営むFさん(36)です。実際に会ってみると、ロングヘアーで女優の菊川怜に似た女性ですよ」(不動産関係者)

 だが、三枝夫人は不動産だけでなく太陽光発電に深く関わるやり手でもある。そこに登場するのは、T社という、太陽光発電で急成長した会社だ。

「昨年5月ごろ、T社は岡山県に作った太陽光発電所を売り込むため、東急不動産に営業をかけていたのです。T社の社長は三枝氏にも会い、パイプ作りに懸命だった。東急側も興味を示し、8月には現場に担当者が視察に来ることになった。ところが、なぜかそこに連れ立ってやって来たのが三枝夫人でした」(東急不動産関係者)

 彼女がその場にいた理由はほどなく分かる。

「岡山の発電所は結局売れずじまいでしたが、その後、夫人はT社に“私を通せば太陽光パネルを安く卸すことが出来る”と持ち掛け、T社はそれ以来、パネルの大半を夫人経由で買うようになったのです」(同)

 三枝夫人と取引を始めたT社は、さらに東急不動産との関わりを深めるようになる。昨年12月、東急は鬼怒川カントリークラブでメガソーラーの建設に着手。40億円規模の事業に参加するため、T社も手を挙げるのだが、声を掛けたのは三枝氏だった。

「そこでT社が出してきた見積もりは、大手の業者よりも圧倒的に安かった。東急不動産は仮契約を結んだのですが、取引先からT社の事業実績に疑問が出され、結局他社が落札してしまうのです。しかし、T社は巻き返し、その後、下請けに入ることに成功しています」

 実はこの入札の直前、三枝社長とT社は癒着を疑われても仕方のないような取引を鹿児島県で行なっている。

■5400万円の投資

 鹿児島市の中心部から北へ車で約30分、小高い山腹に太陽光発電所が現れる。全体で1230坪もある土地の登記簿をみると、そこにはT社、そして三枝氏本人の名前がある。

 この発電所、底地の所有者は近隣の住民だったが、それを建売業者が購入したのは昨年夏のこと。さらに、霧島市の会社「K」が買い受け、発電所に作り直している。折からの太陽光発電ブームで、1坪1万円の原野が10倍以上の値段に跳ね上がる美味しいビジネスだ。

昨年10月24日、Kはこの発電所をT社に8000万円以上の金額で売却、同日に2区画分が三枝氏に転売されている。発電出力は約100キロワット。関係者によると、三枝氏への売り値は約5400万円だが、固定価格買取制度によって10年ほどで元が取れてしまうほど高利回りだ。

 つまり、40億円の工事の下請け業者に、自分の新妻が太陽光パネルを卸し、自分は大儲けできる太陽光発電の設備と土地を売ってもらった訳だ。

 これを世間では疑惑と呼ぶし、果たして東証一部企業の社長のやることなのだろうか。

 もっともT社の弁護士は、

「あくまで適正価格で販売しており、決して利益供与や便宜を図ったものではありません」

 と言うが、この発電所は登記簿には出てこないトラブルを抱えている。

「太陽光発電所を作ったKの経営者は、2003年に傷害で逮捕されているのですが、当時、山口組系の暴力団幹部と報じられている。彼がヤクザを名乗っていたことは、地元の暴力団関係者の間では有名です。さらに、Kは発電所を作っている最中に他の客にも声を掛けて手付を受け取っていた。金だけを払った客はカンカンですよ」(地元の建設業者)

 Kの経営者は、暴力団をとっくに辞めており、二重売買もないと主張するが、儲けが期待できるとはいえ、ずいぶん厄介な物件に手を出してしまったものだ。

 そこで、三枝社長に疑惑の数々をぶつけてみると、こんな答えが返ってきた。

「T社と初めて付き合いが出来たのは、僕が常務の頃で2、3年前のことでした。当時、T社は飲食の自販機みたいなものをやっていて、工事現場とか社員食堂に置いてもらえないかという話を持ち込んできたのです。そんなことから、私はT社の社長を知っていますし、当然、妻もその仲間ですから、知り合いなわけです。でも、彼女が太陽光発電の仕事をやっているということはありませんよ。鬼怒川CCの太陽光発電所で、T社が下請けに入っていることは知りません。(下請けなので)コメントする立場にもありません」

 では、鹿児島でT社から太陽光発電所を買ったことについてはどうなのか。

「もともと以前から探していたんです。小口の物件にずっと興味があった。老後の資産運用ですね。その中のひとつとしてT社の社長から紹介してもらっただけのこと。お金は15年の事業用ローンとキャッシュで払っていますが、それ以上のことは言えません」

 さらに突っ込むと意味のよく分からない「守秘義務」を連発する三枝氏。

 要するに知らぬ存ぜぬを繰り返して事を納めようとしているのだ。株主総会で同じことを聞かれたら、やっぱり答えは同じなのだろうか。

「ワイド特集 人間の証明」より

週刊新潮 2015年4月16日号掲載

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