「麻原彰晃」の妻と三女の対立が引き金になった古参幹部立てこもり

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 大塚家具と同じくオーナー企業の場合、後継者問題で揉めることが少なくない。それは、オウム真理教(現・アレフ)とて同じである。麻原彰晃の後継を巡り、麻原の妻派と三女派が対立。これが引き金となって、古参信者による“立てこもり事件”が起きた。

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 件(くだん)の「事件」が起きたのは、アレフの金沢支部である。公安関係者によれば、

「今年に入ってから60代前半の女性信者が、金沢の数名の信者と共に立てこもっています。現在、アレフは全国に約1300人の信者がいる。彼女は、全国に二十数名しかいないとされる“師”と呼ばれるステージ(階級)で、東京の道場長も兼務した幹部信者です。すでにアレフからの独立宣言もしていて、新たな布教活動をしています」

 金沢支部には40~50人の在家信者が出入りしており、内紛勃発か、とも映るのだが、元アレフ代表の野田成人氏は言う。

「今回の件は、麻原の次男の教団復帰を巡る家族内の喧嘩が根底にあります。別の言い方をすれば、次男を後継にしようとする麻原の妻派と、これに異を唱える三女派の対立です」

 現在、アレフの主流派は、麻原の妻と近い最高幹部の二ノ宮耕一、荒木浩広報部長らである。しかし、麻原の後継者を決めるにあたり、信者にとって何より重要なのは「ステージ」と「血」。麻原の実子である三女は、妻とは比較にならないほど有難い存在だという。

「そこで、荒木ら妻派は、麻原の次男を担ぎ出そうとしています。彼らにとってステージは男の方が上。次男がより正当な後継者というわけです。これに三女派が反発しているという構図」(先の公安関係者)

■無期長期修行

 野田氏が続ける。

「昨年、二ノ宮らは三女派の信者を相次いで除名処分にしました。除名は最も重い処分で、教団内でも波紋を呼んだ。金沢の女性信者は、『除名処分はおかしい。もう少し皆で議論した方がいい』と言い出したのです」

 女性信者は、元々三女に近い信者でないという。しかし、妻派にとって煩(わずら)わしい存在と映ったようで、

「そこで、荒木や二ノ宮は彼女を冷遇し始めた。具体的には、彼女のいる金沢を統括する名古屋支部で『無期長期修行』をさせた。ただ、修行とは表向きの話で、約4カ月間、トイレに行くのも監視付で軟禁状態に近かったそうです」(同)

 その後、女性信者は何とか名古屋支部を抜け出し、金沢支部へ戻り、立てこもった。以降、麻原の妻に近いアレフ関係者との接触を断っていて、

「金沢支部として使用している鉄筋3階建のビルは、9年ほど前に女性信者が購入したもの。土地も建物も所有者は、今も彼女になっています。アレフとすれば、そこから出ていけと言える立場になく、お手上げ状態でしょう」(公安関係者)

 事実上、金沢支部は消滅することになるが、

「除名された三女派の信者も、埼玉の越谷にあるアレフの施設を占拠しています。独立宣言した金沢の信者とは、緩やかな連携を取っている可能性があります」(野田氏)

 地下鉄サリン事件から3月20日で丸20年。上祐一派の独立に続き、オウムは再び分裂含みの状況を迎えたようである。

「ワイド特集 木の芽時の夢うつつ」より

週刊新潮 2015年3月12日号掲載

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