イスラム国首都「ラッカ」の地下抵抗組織の証言「静かに虐殺されるラッカ」

国際週刊新潮 2015年2月5日号掲載

 後藤健二さんが目指したシリア北部の街ラッカ。現在、イスラム国の首都であるこの街には、命を賭して彼らの専横に抗う地下組織が存在する。その名も『静かに虐殺されるラッカ』――。

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 彼が現れると、モスク内は異様な興奮に包まれた。

「ムスリムのカリフ(預言者ムハンマドの代理人)に!」(兵士)

「ムスリムのカリフに!」(群衆)

「アブー・バクル・バグダディ!」(兵士)

「アブー・バクル・バグダディ!」(群衆)

「神よ!」(兵士)

「全知全能の神よ!」(群衆)

 兵士の叫び声に呼応して大声で唱和する大群衆。昨年7月、イスラム国の最高指導者バグダディが、ラッカで行った説法会の様子だ。

「イスラム国はバグダディのカリスマ性を演出していますが、これをもってラッカの住民が彼を敬愛し、忠誠を誓っていると判断してはいけません。説法会には招集がかけられ、皆、強制的に参加させられている。公開処刑が横行する中、“恐怖”が人々を支配しているのです」

 こう語るのは、『静かに――』のメンバーで、現在、トルコに避難しているアブムハンマド氏(26)だ。彼はシリアの首都にあるダマスカス大学で法律を学んでいたが、昨年、ラッカがイスラム国に占領され、帰郷を断念。家族を故郷に残したまま、5カ月前、単身トルコに渡ったという。

「そこでかねて文筆活動などに携わっていた人たちと連絡を取り合い、この非営利の組織を作りました。目的はネット等を駆使し、ラッカ州で起こっている事実やイスラム国の残虐非道を、写真やビデオ、レポートで内外に発信することです」

 メンバーは18人で、うち12人はラッカに留まり、地下活動に専念している。

「従来の新聞の購読は禁止され、テレビ局も閉鎖されてしまった。もともと一般家庭にネットは普及していなかった。商業地区ではネットが使えるが、彼らがコントロール下におき、パソコン自体が検査される」(同)

 ちなみにラッカの人口は22万人だったが、現在は15万人程度。減少を食い止めようと、1カ月前には、50歳以下の人間が街を出ることを禁じる新たな法律が施行され、さらに市民を苦しめているという。

『静かに――』のHPに曰く、

〈街では(宗教警察への)密告が横行し、誰も信用できず、皆、疑心暗鬼に陥っている。友人や家族による密告すらあるのだ〉

 囚人が収容される牢獄は、

「数メートル四方の狭い房に30人もの囚人が詰め込まれるので、劣悪な環境です」(同)

 驚愕すべきはHPに記載された次の情報だ。

〈イスラム国は将来優秀な兵士を育てるため、学校で8~16歳の有望な少年をスカウトし、軍事英才教育を施すのだ。驚くべきことに、彼らには人殺しに慣れさせるため、実際に殺人を経験させている。少年たちは死刑囚に銃口を向け、引き鉄を引くのだ。そして次々、何人も射殺していく〉

 人間性を破壊された若者で組織は新陳代謝を図ろうとしている。

「特集 暗黒の支配地域に電話インタビュー! のべ37人に21時間15分! 『イスラム国』大全」より