イラク人女性の証言「イスラム国の女兵士が持ってきた大きい袋の中身」

週刊新潮週刊新潮 2015年2月5日号掲載

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「血と砂と祈りの国」とも呼ばれる中東諸国。その一つ、イラクでもイスラム国は活動中。バグダッド南部に位置し、聖地「カルバラー」につながる都市ムサイーブ周辺も、昨年8月から激しい戦闘に晒された。一度はイスラム国に支配されたものの、約2カ月後には駆逐に成功。が、この地には混乱の中で息子を奪われ、悲嘆に暮れる母親がいた。

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 誰彼となく銃口を向け、ところ構わず爆弾を仕掛けるイスラム国は、時には敵対勢力の誘拐も攻撃の手段として活用する。ムサイーブ近郊のジュフ・サハール地区に住む女性は、イスラム国の兵士らに26歳の長男をさらわれた。後に遺体で見つかったその姿は、凄惨を極めていたという。

「昨年夏の戦闘が始まった頃です。近くの商店で働いていた息子が突然、帰宅しないまま行方不明になりました。翌日になっても家には戻らず、警察にも相談して必死で探しましたが、結局見つかりませんでした」

 数日後、途方に暮れた女性が自宅近くの広場で休んでいると、見知らぬ男女に声をかけられたという。

「ベンチに腰かけていると、女性が“この荷物を見ていて下さい。すぐに戻りますから”と頼んできたんです。そして、大きな袋を私の足元に置いてどこかに行ってしまった。彼らはそれきり、戻って来ませんでした」

 しばらくして袋を見ると、わずかに口が開いている。中を覗こうと顔を近づければ、そこから漂ってくるのは鼻をつくような異臭――。

■見せしめのため

「何だか嫌な予感がして、近くを歩いていた人を呼び止めて一緒に袋を開けてもらいました。すると、中からは白っぽい布にくるまれ、ところどころに砂がついたバラバラに切断された人間の遺体が出てきたのです」

 何人かで一部が赤黒く染まった乾いた布を剥がしていくうちに、若い男性の頭部が出てきたという。

「認めたくありませんでしたが、それは息子のものでした。ああ、アッラーはどうしてこんな残酷な行いを許すのでしょう。息子が一体、何をしたというの……」

 日本人には想像すらつかない、むご過ぎる現実。だが、彼の国では今もこうした日々が続いている。

「彼女の息子はイスラム国の内情を探るイラク軍の協力者だったようだ。切り刻んだ遺体を家族の元に戻したのは、見せしめのためでしょう。先の2人は近隣住民を装ったイスラム国の女兵士らで、“従わない者は殺す”という周辺一帯に向けたメッセージだったはず」(ムサイーブ在住の民兵)

 この地域に限らず、イラク各地で人々を恐怖で支配するイスラム国。彼らは幼い命にさえ、容赦はしない。

「スクールバスに大量の爆薬を載せて授業中の小学校に突っ込ませたり、校門付近に設置したリモコン爆弾を登下校のタイミングで爆発させたこともある。子供たちを標的にするのは、簡単に親たちを屈服させられるからに他ならない」(同)

 死と隣り合わせの“日常”は、終わりそうにない。

「特集 暗黒の支配地域に電話インタビュー! のべ37人に21時間15分! 『イスラム国』大全」より