「秒速で1億円稼ぐ男」は露悪の虚像で 「与沢翼」シンガポールの日々

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 その煽り文句同様、秒速での転落劇であった。「秒速で1億円稼ぐ男」から一転、2014年に会社が破綻に追い込まれた与沢翼氏(32)。今はシンガポールに移住し、再起を企む日々である。

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「テレビに出ていた頃は、今さえよければいいという生き方だった。そこに戻るつもりは全くありません」

 と国際電話の先で殊勝に語るのは、与沢氏本人である。氏は12月16日にシンガポールに引っ越したばかり。まだ座布団とパソコンしかない部屋からの独白だ。

 与沢氏は、金儲けのスキルを伝授する情報商材の販売などで「年収12億円」を稼ぐ一方、メディアに度々登場しては、家賃に合計800万円を支払い、計2億円近くの高級外車3台を乗り回し、美女を脇にはべらせる“リッチな生活”を晒したお人。白いスーツでロールスロイスにふんぞり返る姿をご記憶のムキもあるだろう。

■3食コンビニ弁当

 もっともその“露悪”には事情もあったという。

「うちの会社は、会長の僕がテレビに出ることによって知名度を上げ、客を呼んでいた。ネタになるなら何でもしました。ある番組では当初、高級腕時計を1本買うという話だったのに、ディレクターに“あと1本!”と酒を飲まされ、結局4本、1200万円分も買わされてしまったんです。実際、最高で稼いだのは月5000万ですから、『秒速1億』も『年収12億』も虚像でした」

 結果、一時はホリエモンの再来と持て囃されたものの、14年4月、税金滞納で会社が経営破綻の危機にあることを突如、明らかにした。

「実は、会社は黒字の連続。儲かっていたんです。でもヨイショされて、ポンと5000万円でファッションショーのスポンサーになったりと散財も酷かった。そんな経営だから、内部留保が底を突き、約3億円の税金が支払えなくなったんです。そこからは苦しくて、それまで最高で月3000万円使う生活をしていたのに、5万円で賄い、残りはすべて税金に費やした。マンションも差し押さえられたので、友達のワンルームに転がり込み、食事も3食コンビニ弁当で過ごしました」

 そんな禁欲生活と会社のほぼすべての資産売却によって、1月には完済できるまで漕ぎ着けたのだという。

 そんな彼は、なぜ今、シンガポールにいるのだろう。

「刹那的な暮らしが嫌になってしまったんです。車も女性にも疲れました」

 と、与沢氏が続ける。

「僕は今でも有料メルマガの配信などで月100万円くらいの収入がある。でも、これを散財するのではなく、資産形成をしたいと思った。それには日本より税金が安いシンガポールの方がずっと有利。また、結婚も決めたんです。いま付き合っている女性とこっちで一緒に暮らします。子供も欲しい」

 一晩100万単位を浪費していた姿からはビックリの変貌ぶりであるが、

「こちらで会社を設立し、株や不動産取引に進出するつもりです。特に不動産に憧れている。ここを拠点にして、ゆくゆくは“アジアの不動産王”と言われるようになりたい。ドナルド・トランプが目標です」

 と、資産30億ドルのアメリカの大富豪の名を出すあたり、威勢の良さだけは異国でもちっとも変わらないのだ。

「ワイド特集 羊の皮を被った狼 虎の皮を着た羊」より

週刊新潮 2015年1月1・8日新年特大号掲載

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