中井貴一 広末涼子の顔を見て「すげえ、いい女が来た!」――鼎談 広末涼子×浅田次郎×中井貴一(6)

芸能週刊新潮 2014年9月18日菊咲月増大号掲載

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 9月20日公開された映画『柘榴坂の仇討(ざくろざかのあだうち)』。原作者・浅田次郎さん、主演の中井貴一さん、その妻を演じた広末涼子さん。座談会は大いに盛り上がり、話は広末さん演じる侍の妻セツの「いい女」っぷりに及ぶ。

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中井:互いの顔も知らぬまま、セツは彦根から江戸へ嫁いでくる。祝言の場で白無垢のセツが顔を上げ、金吾と初めて対面するシーンでは、最初、金吾は「ん」とさりげなく受ける設定だったんです。でも、どんな女性か全く分からない状況で、広末さんのこの顔が出てきたら、男だったら絶対、「ラッキー!」と思いますよね。「すげえ、いい女が来た!」と(全員爆笑)。金吾だってそう思ったはずで、監督にも相談して、そういう表情で演じました。

浅田:昔の縁談というのは、個人と個人ではなく家と家だから、断れない。断れないだけに、すごい顔が出てきたら嫌だよね。


中井:みんな、心の中では「どうせ、そこそこの容貌だろう」と、ある程度は覚悟している。そこに、この広末さんですよ。それは、「ワーッ」と思いますよ。

浅田:ガッツポーズだね。

中井:ガッツポーズですよ。だから、この物語は実は、「女運の良い男」の物語なんですよ。だって、妻はこんなにも美人で、13年も支えてくれて、おかげで仇討までたどり着いて、ですからね。今から映画のタイトル、変える?(笑)

浅田:僕らが生きる今の世の中って、そういうロマンがない。だから、小説になりにくくなっているんだよ。ネットで人間関係ができても、それは本当の人間関係ではないからね。携帯電話をみんなが持っているから、すれ違いの恋さえない。

広末:そうなんです!

浅田:携帯電話がなかった時代の待ち合わせは、すごくドキドキした。5分経っても相手が来ないと、「俺、場所を間違えているんじゃないか」と心配になった。とってもロマンチックだったね。ネット社会がロマンティシズムを奪ってしまったために、現代社会では小説は成立しないんです。精妙な人間関係も、安らぎも、もう時代劇の中にしかないんだよ。江戸じゃなくても、ネット社会が現れる前の世界にしかない。今、一部の時代小説が爆発的に売れている理由は、まさにそれだと思うよ。ロマンチックなんだよ。

広末:待つとか、祈るとか。

浅田:すれ違うとか。

広末:好きだからひたすら走るとか。そういう意味でも、この映画は時代劇ですが、デートでもぜひ観てほしいです。きっと、お隣にいる恋人、夫、妻とピュアな気持ちで向き合える、初心に帰らせてくれる、そんな作品になっていますので。

「特別読物 映画公開記念! 鼎談 広末涼子×浅田次郎×中井貴一「柘榴坂の仇討」に刻まれた日本人のDNA」より

デイリー新潮編集部