壇蜜「私も『見せろ』と言われたことがあるんです」――平野啓一郎×壇蜜対談(1)

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 7年ぶりの作品集『透明な迷宮』を上梓した平野啓一郎氏と、ドラマ「アラサーちゃん」でちょっとエッチな主人公を演じる壇蜜氏。迷宮をめぐる対談は2時間以上。想像以上に深い“接着面”とは!?

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 新作の『透明な迷宮』拝読しました。いろんなところに向かって矢が放たれている短篇集だと思ったのですが、どの短篇にも共感する部分があって、自分の人生と接着面が多かったです。オビの又吉直樹さんの文章にある「自分の知識や想像を超越した刺激的な作品」とはまた違う感想なので、それでいいのかなと不安になりましたが。

平野 書き手としては、一人ひとりに違うことを感じてもらいたいので、今の感想は嬉しいです。

 一篇目の「消えた蜜蜂」は、まず自分の名前の字がタイトルに入っていますし(笑)、ここに出てくるような、人から変わり者と言われている孤独な人には会ったことがあるので、そういう人を思い出しました。「火色の琥珀」には菓子職人が出てきますが、私も菓子職人だったんです。

平野 ああ、そうですね。プロフィールか何かで見ました。

 「Re:依田氏からの依頼」ではサドの本が出てきますが、私も高校の時に読んだことがあるので、出てくる人の名前もよく分かりました。どれを読んでも、自分の人生に触れない部分がなくて、それが刺激的でした。表題作の「透明な迷宮」は、私も似たような経験があるんです。

平野 え? これは日本人男女が旅先で見知らぬ人たちの前でセックスしろと言われるところから始まりますが……。

 「見せろ」と言われたことがあります。「family affair」は姉妹のお話ですが、私の母にも妹がいてすごく仲がいいので、似ているなと思いながら読みました。

平野 僕には姉がいるだけなので、男兄弟って神秘的だと思っていて、同時に姉妹にも興味があるんです。各年齢の姉妹が書きたくて「family affair」はおばちゃん姉妹にしましたし、他の収録作にも姉妹を出しました。壇さんは姉妹はいますか?

 一人っ子です。でも11歳年下の従姉妹が私にそっくりなんです。

平野 「壇蜜さんの親戚ですか」と訊かれているかもしれませんね。

 苦労していると思います。公務員なので、私のような感じを求められても困りますよね(笑)。

lnterview&Text/Asayo Takii

「ROLa」2014年9月号掲載

「eye-popper 平野啓一郎×壇蜜『透明な迷宮』」より

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