国際的保守主義のススメ/『日本人に生まれて、まあよかった』
本書のタイトルは、夏目漱石が明治42年に満州、韓国を旅した際に書いたエッセイの一節から採られている。「まあ」の二字に、漱石の、自らの判断を一呼吸おいて冷静に見返す余裕と、ファナティックな愛国主義に与するものではないという知識人としての矜持が感じ取れる。
著者は1931(昭和6)年生まれの東京大学名誉教授。ダンテ『神曲』やボッカチオ『デカメロン』などの翻訳から、夏目漱石、竹山道雄などを通しての文明批評まで幅広い著作をもつ比較文化史家で、「反体制」ではなく「反大勢」を自認する。...