「がん」は痛くない! 緩和ケアの専門医ががん治療の迷信を解く

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 今では日本人の3人に1人が「がん」で亡くなっています。しかし、がんに対する間違った考えを持っている人はまだまだ多いようです。例えば「がんは痛みに耐え苦しむ、怖い病気だ」「どうしようもなく、我慢できない痛みにはモルヒネを使うが、モルヒネは中毒になる扱いにくい薬だ」など。

ホスピスという希望―緩和ケアでがんと共に生きる―』(新潮文庫)の著者で愛知県国立病院機構豊橋医療センターの緩和ケア部長でホスピス医である佐藤健先生は「一番大事なことは、痛みを我慢しないこと」と断言します。さらに「ほとんどの痛みは、取り除くことができるのだから」、と。佐藤先生に、未だに多いこの2つの誤解について聞いてみました。

――がんの痛みに苦しむ必要はないのですか。

「はい。少しでも痛みを感じたら、我慢をする前にホスピスを訪ねてください。ホスピスでの大切な治療の一つは痛みを取ることです。それぞれの痛みに合わせたモルヒネなどを飲んでもらえば、だいたい一週間ほどで完全に痛みを取ることができます」

――モルヒネは寿命を縮める、頭がおかしくなる、中毒になる、などという人もいますが。

「そんなことはありません。モルヒネで寿命が縮む、頭がおかしくなる、というのはまったくのデタラメです。また、中毒になるというのもウソです。一度使ったらやめられなくなる、と思って使うのを躊躇している人はたくさんいます。がんがそこに存在し、痛みが続く以上、モルヒネを使い続けなければなりません。これは必要だから飲み続けているのであって、中毒だからではありません。高血圧の人は降圧剤を飲み続けています。この人たちを降圧剤の中毒とは言わないでしょう。糖尿病の人はインスリンを注射し続けます。この人たちをインスリン中毒とは言いません。仮にがんの痛みを抑えるためにモルヒネを飲んでいて、同時にがんそのものに対して放射線治療をした場合。放射線治療の効果があって、がんの痛みがなくなったとします。その時は徐々にモルヒネを減量して中止することもできます。例えば一週間程度を目標に一日少しずつ減量していけばいいのです」

 佐藤先生はご自身の本の中で、ホスピスへの「3つの入院」、患者さんに対してどのようなサポートが必要なのか、なぜ先生のホスピスでは心電図モニターを使わないか、などホスピス及び緩和ケアについて感動的なエピソードを交えて、分かりやすく説明しています。

 人は誰でも必ず最期を迎えます。人生の最終章まで自分らしく生きるために、緩和ケアに注目してみてはいかがでしょう。

デイリー新潮編集部

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