時を越える旅/『イタリア古寺巡礼 シチリア→ナポリ』

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 現代イタリアの映画や小説の中で出会う南イタリアは貧しい。特にこの本の巻頭を飾るシチリア島では、領主のような農場主がいばり、マフィアが暴力をふるい、黒い服を着た農民たちは逃げるようにアメリカに渡っていったのだ。口絵写真の平和な羊たち、次の頁の崩れかけた城壁、そして目次のあとに置かれたパレルモの町を過ぎて、ついに黄金が輝く王宮附属礼拝堂の天井と天蓋の支配者キリストを見たならば、美しい写真に目を奪われながらも、むしろ苛烈な支配を想像する人がいるかもしれない。

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