動画を「倍速」で見る“タイパ”習慣、脳疲弊で「うつ」のリスク 精神科医が指摘

国内 社会

  • ブックマーク

脳に大きな負担

 さらに、昨今よく耳にする「コンテンツ」という表現に関して、こう続ける。

「僕は製作者が精魂込めて作った作品をコンテンツ呼びする風潮も嫌いです。時間を埋めるための消費物のような呼び方で、リスペクトがない。タイパ重視の倍速視聴も、結局は作り手に対するリスペクトのなさが根底にあると思います」(デーブ氏)

 精神科医の伊藤拓氏も、倍速視聴の背景にある考え方を次のように解説する。

「倍速視聴する人が多いといわれる今の20代や30代は、そもそも視聴の動機が作品を『楽しむ』ことではない傾向にあります。彼らの目的は周囲と話を合わせるために流行の映画やドラマのストーリーを手っ取り早く『把握する』ことで、作品の理解は重視していないように映ります」

 が、その手軽さとは裏腹に、弊害は大きい。

「日常的に動画の倍速視聴をすることは脳にとって大きな負担であり、ダメージになり得ます。情報のスピードが速過ぎると脳の処理が追い付かなくなるのです。処理の許容範囲を超えて負荷がかかると、脳が慢性的に疲労し、落ち込みや不安などの精神的症状が出やすくなり、抑うつ状態になる恐れがあります」(同)

 そうした状態は、人間関係にも影響を及ぼすという。

「通常の社会のスピードが遅く感じられ、間(ま)のある会話を楽しんだり、沈黙があっても慌てず落ち着いて過ごしたりといった、人とのコミュニケーションも取りにくくなるのです」(同)

 動画の中の人間をいくら早回しにしても、決して倍速では進まない現実に適応できなくなっては元も子もあるまい。

週刊新潮 2026年10月8日号掲載

オピニオンワイド「このデタラメを許すな!」より

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。