お寿司屋さんに「手袋をして握ってください」と要求する客も…コロナ禍の“過度な感染対策”が終わらない日本社会 医師は「消毒液を空中に噴霧してはいけないのは感染対策の大原則です」
水で丁寧に手洗いすれば十分
現在、コロナを気にしながら生活している人は少数派だと思うが、一部の人はまだその余韻を引きずっているようだ。今なお社会に残る影響を専門家はどのように見ているのだろうか。コロナ騒動の際には病院感染管理室長として、最前線で患者の受け入れと治療に努めてきた「静岡市立静岡病院」の医師・岩井一也氏に話を聞いた。
――コロナ騒動を経て、アルコール消毒が定着した印象を受けます。しかし、当時から「アルコール消毒は意味があるのか」「気休めにしかならない」と疑問を呈する人もいました。医師として、どのように考えていますか。
岩井:私は、一般社会においてここまでのアルコール消毒を行う意味はほぼないと考えています。コロナ前、“感染対策”という言葉は一般社会でほとんど使われていませんでしたよね。もちろん抗菌グッズなどは以前からありましたが、それが社会全体の感染症をどれだけ減らしたかという明確なデータはありません。
私は以前から、医療現場以外の一般社会に過度な感染対策を強いることには反対ですし、その考えを訴えてきました。基本的な衛生習慣、つまり「食べる前には手を洗う」「手が汚れたら洗う」で十分です。感染対策が必要なのは、病院や介護施設などのごく一部の環境に限られます。
――アルコール消毒はする必要がないと。
岩井:はい。少なくとも、一般社会ではアルコール消毒は不要です。コロナ前に推奨されていた、家から帰ったら水で手を丁寧に洗う程度で十分。あの頃に行われていた感染対策は、明らかに行き過ぎでした。何より、行き過ぎた行為に見合うほどのメリットはありません。アルコール消毒では、コロナもインフルも防ぐことはできませんから。
アルコールを空気中にばらまくのはNG
――誰しもがコロナ前にやっていたことを、普通にやればいいわけですね。
岩井:そうです。今必要なのは、“コロナ前の日常に戻す”ということですね。過度な消毒は感染対策を“やった気になっているだけ”に過ぎず、意味がありません。過剰な消毒の弊害や限界について、公的機関やメディアからもっと客観的なアナウンスがあっても良いはずです。
テレビに出てくる専門家は、「基本的な感染対策を」と繰り返します。では、基本的な感染対策とはいったいなんでしょうか。基本的な感染対策という言葉は抽象的なので、受け取る側がどんどん敏感になり、過剰な行動に走ってしまう側面があります。私はコロナ前のような自然な衛生習慣に戻すことこそが、「基本」だと考えています。
――取材した店から、アルコール消毒のせいで製品がダメになったり、アルコールで拭いた革製品が汚れてしまったという話を聞きました。
岩井:私が勤める病院でも、病室の前に消毒液を設置してあるのですが、アルコールが飛び散って廊下が変色したり、壁が汚れるというトラブルが何度もあります。
さらに問題なのは、空間に消毒液をスプレーする行為です。アルコールなどの消毒液を空気中に噴霧してはいけないというのは感染対策の大原則。しかし、この原則は一般にはほとんど知られていませんよね。
――まったく知りませんでした。
岩井:アルコールや次亜塩素酸は広範囲の空間消毒には適していませんし、吸入すれば呼吸器などを痛める危険もあります。またアルコールは引火の危険性もある。安易に撒き散らすものではなく、リスクを理解して扱うべきものなのです。
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