なぜ今、ヤクザ映画「竜二」なのか 43年ぶりリメイク、柳楽優弥を「日本の宝」と語る監督の狙い

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青春映画でもある

──竜二は荒んだ子供時代を送ったらしく、「親とキャッチボールをしたことがない」とつぶやきます。まり子は地方での単調な生活が嫌になり、東京の歌舞伎町で暮らし始めたものの、何一ついいことがなかった。不幸な出来事が続き、死まで考えた。そんな2人が出会い、ささやかながら幸せな生活を送り始めた。ドラマは恵まれた若い時期を送る人ばかり描きがちですが、現実はそうじゃないですからね。

「RYUJI 竜二」は青春映画でもあるつもりなんです。コンプライアンスの時代にヤクザを主人公とする映画をつくるわけですから、いろいろと考えた末、そうしました。

──確かに、竜二とまり子、直とひろしの青春の日々が描かれています。

 だから、金子さんの映画をリスペクトしているものの、落としたエピソードもたくさんある。設定は1984年から90年ごろの歌舞伎町ですが、あのころの歌舞伎町の色が強すぎるシーンは極力落としました。たとえば、ある店員が金子さんの竜二に向かって「俺は昔、悪かった」と粋がると、竜二が痛めつけるエピソードがあるんですが、削ぎ落としました。

──ストーリーにも大きな変更点がありますね。

 ええ。金子さんの竜二は子供が生まれると、家族と弟分たちのどちらを選ぶかで苦悩しますが、結局は決められない。現状から目を背けました。柳楽さんの竜二は逃げない。家族と弟分たちのどちらを取るのかで葛藤する。それを描きたかったんです。

──ヤクザは親分を家長とする疑似家族です。柳楽さんの竜二も弟分の直、ひろしと疑似家族でした。生い立ちが恵まれない3人は歌舞伎町で出会い、助け合って生きてきました。文字通り疑似家族です。ただし、ヤクザについて見聞きしたことのない人が多くなりましたから、3人の関係性を描くのは簡単ではなかったのではないですか。

 金子さんの竜二は口にしなかったセリフを、柳楽さんには言ってもらいました。まり子に向かって、直とひろしのことを「俺の家族だ」って最初の時点で紹介するんです。ひょっとしたら3人の関係がボーイズラブに見えてしまうかもしれませんが、それでも構わないと思いました。

──まり子のキャラクターも永島さんと川栄さんは違います。どちらのまり子もヤクザの妻の悲哀を味わいますが、永島さんは強く、泣きません。川栄さんは涙を流します。

 永島さんによる、まり子像を追う必要はないと思いました。この映画なりの男女のあり方を描こうと考えました。

──設定は1984年から90年ごろです。どうしてですか。

 物語を劇の世界に閉じ込めやすいと思ったんです。スマホみたいなコミュニケーションツールを登場させずに済む。

──スマホが映画やドラマに出てくると、登場人物たちの感情や関係性の表現が単純化されてしまいがちですよね。なかなか話せないからこそ生じるような胸の内を表現しにくい。

 大切な人と連絡を取るのに公衆電話に走らなくてはならない時代だからこそ、描けるエピソードもありますよね。

──ドラマや映画に求められるコンプライアンス意識は強まるばかりです。どう思われますか。

 やっぱり過剰だと思いますね。ただ、今は通過点に過ぎないと考えています。

水田伸生(みずた のぶお)
1958年、広島県生まれ。1981年に日本テレビ入社し、ドラマ制作を担当。向田邦子さん原作の「冬の運動会」(2004年)で放送文化基金賞を受賞した。坂元裕二氏脚本の「Mother」(2010年)が同賞を含むドラマ各賞を独占した。日テレ時代から映画も手掛け、宮藤官九郎氏脚本の「舞妓Haaaan!!!」などを監督した。執行役員などを歴任したあと、2024年に同社を退社し、現在はアミューズに所属する。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社。放送担当記者・専門委員として、1994年のNHK連続テレビ小説「春よ、来い」のヒロイン途中交代や、1999年のフジテレビ「愛する二人別れる二人」のやらせ問題などを特報する。2015年に毎日新聞出版へ入社し、サンデー毎日編集次長を務める。編集者としては「小池百合子都知事の真実」などを担当した。2019年に独立。元・放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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