「入社半年で退社されるとは」「なんであんなやつ採用したんだ」問題を解決するために採用側が覚悟しておくべきこと
「一番行きたかった会社」を半年で退社
採用は企業にとって永遠のテーマ、頭痛のタネである。X上で最近、話題になったのは、山田瑠々さんという22歳の女性の投稿。
「新卒で入社した会社を退職しました。
就活を必死に頑張って、やっと入れた一番行きたかった会社でした。
入社後もいち早く結果を出したいと思っていたし、周りの方々にも本当に恵まれていました。
だからこそ、辞める決断はものすごく悩みました」(9月27日)
今後は配信者(ライバー)として、また自身が設立したマネジメント会社代表として活動していくのだという。
入社半年での決断には若さゆえの勇気を感じる人もいる一方、当然ながら「いくら何でも早いだろう」といった違和感を表明する人もいる。決断が正解だったか否かは今後の本人次第だろうが、企業側が「痛い」と感じているであろうことは想像に難くない。そもそも山田さんは職場環境に問題があったとは言っていない。それだけに採用した側は「なぜ」との気持ちを抱くことになるだろう。
採用にはあらゆるコストがかけられている。お金だけではなく、関係者の時間や労力も相当なものだ。
学生時代にミスコンで優勝という華々しい過去があり、かつ自ら起業するバイタリティーを持つ山田さんのような人に、あっという間に去られるのは、コストに見合わない。
採用は難しい
こうした「すぐに辞められた」問題以外に、採用に関する問題としては、「なんでこんなやつを採用したのか」問題もある。
多くの企業では、面接を何回も繰り返し、複数の目で検討して、「これは逸材!」「これなら大丈夫」という人材を確保している、つもりである。
しかしいったいどうやって網の目をくぐるのか、「なんでこんなやつ」は一定数存在する。これは企業人なら誰でも頷くところだろう。
ネットビジネスの黎明期から数々のメガヒットやV字回復を牽引してきた起業家でスマートニュース執行役員として広告・新規事業の立ち上げを担ったこともある投資家の川崎裕一氏は、採用に関する一般的な方法の有効性を否定する。多くの企業が採用において行っている、「面接を何回も繰り返し、複数の目で検討」というやり方にはむしろ弊害があるという。
かつて川崎氏は、募集要件にはまったく合致しない人材を採用し、成功したことがある。それは決して偶然ではなく、振り返ってみれば合理的な判断だったと振り返る。どういうことか。
以下、「新潮QUE」掲載の川崎氏執筆の考察(採用の基準は、なぜスキルではなく偏愛なのか)をもとに見てみよう(引用はすべて同記事より)。
採用要件には合わないが……
川崎氏がスマートニュースで営業組織を立ち上げていたときのことだ。
小さな広告会社の、若い営業マネージャーが応募してきた。が、その人物は求人票に書いた採用要件には、まるで合っていない人物だった。
「事業会社の経験もなければ、我々が扱おうとしていた商材の知見もない。要件との照合表を作れば、空欄のほうが多かっただろう。
それでも、話しているうちに、いくつかのことがわかってきた。彼は営業として与えられたノルマを、一度も外していなかった。部下から慕われていた。話していて、嫌なところや意地悪なところが何もなかった。人の話を素直に聞くことができた。
何より、当時まだ一般的に知られていなかったスマートニュースを見つけて、自分から話を聞きに来た。世の中の誰も、この会社に値段をつけていなかった。その会社を、彼は見つけたのだ。彼が解きたがっていた問題は、扱う商材でも肩書きでもない。誰も値段をつけていないものを見つけて、そこに自分の時間を賭けることだった」
当時の同社の採用手続きは、面接が5回で、執行役員と取締役の全員と会うことが必要とされていた。面接の結果は、賛成3人、反対2人と割れたが、川崎氏は強く推した。
「いまこのフェーズで必要なのはリスクを取れる人間であり、数字を外していないという事実であり、変化に対応できる素直さである」と主張して、反対を押し切って採った。
結果として、彼は成果を挙げたという。
今日の「採用要件」は明日には古くなる
なぜ採用要件に合致しない人物が成果を挙げることができたのか。この疑問はそのまま「採用の要件とは何か」という問いにつながる。これについて川崎氏はこう説く。
「完璧な採用要件は存在しない。会社が変化し続けている以上、要件は書いた瞬間から古びていくからである。これは、要件を作った人が怠慢だからではない。真剣に考えて作っても、未熟なものにしかならない。逆に言えば、3年前の採用要件が今も完璧に当てはまる会社があるとすれば、それは要件がよくできているのではない。会社のほうが止まっている。
この一点を認めるだけで、採用の風景が変わる。要件との照合が精密になればなるほど、我々は過去の会社に合う人を精密に選んでいることになる。スマートニュースの5回の面接で、要件と照合して見送るべきだと判断した役員たちは、手続きを正しく踏んで、その要件が書かれた時点の会社に合う人を選ぼうとしていた」
AIの進化により、「常識」が古びるスピードはこれまで以上に加速することだろう。
当然ながら、採用においても新しい考え方や手法を考え続ける姿勢が組織人には求められる。
川崎氏はこの先必要な「人を見る目」とは何かについて、「採用の基準は、なぜスキルではなく偏愛なのか」でさらに深く論じている。


