8月発表の研究論文に衝撃的な調査結果が・・専門家が指摘する「プロテイン」ブームの健康リスク
ここ数年で、スーパーやコンビニで「高タンパク質」を謳う食品を目にする機会が、一気に増えてきた。プロテイン飲料にシリアルバー、サラダチキンから高タンパク質ヨーグルトまで、商品棚を彩るそのラインナップは実に豊富である。少しでも多くのタンパク質を――。そんな風潮が高まるなか、「タンパク質20g入り」との表記が目に付けば、つい手が伸びるのも無理はなかろう。しかし目下の“プロテインブーム”に、もし科学的な根拠に基づく“落とし穴”が存在すると聞けば、そう呑気にはいられまい。そして実際、いま専門家たちが警鐘を鳴らすのは、人々の健康志向とは裏腹な、「高タンパク食品」の健康リスクなのだ――。
プロテイン信者
「最初はいつもの食事で十分じゃんって思ってたけど、今はすっかりプロテイン信者です。飲みやすいし、美容のためにも欠かせません」
とは、都内に店舗を構える高級パーソナルジムに通う30 代女性。その手にはやはり、「1杯で12gのタンパク質」が含まれるという “プロテイン”――。
せっかく筋肉に負荷をかけたのだから、その分「元を取らないと」。そう思い、せっせと手軽な高タンパク食品で“補給”する。
一度ジムに通った経験のある方なら、“信者”へと傾く彼女の心情にも、微かなりとも覚えがあろう。
しかしここ数年、かようなプロテインへの“信仰”は、トレーニング場だけには留まらなくなっているのだ。
京都女子大学の今井佐恵子特任教授は語る。
「近年は、筋トレだけでなく、健康や美容などの幅広い目的でタンパク質を摂取しようという風潮が高まっています。企業が“高タンパク質”を商品の売り文句とすることが増えたため、“たくさん摂らなきゃ”と不安に感じる人も増えている。『タンパク質20g入り』と大きく表記されたパッケージを見た消費者が、良かれと思ってカゴに入れてしまうのも無理はありません」
実際、富士経済グループが昨年11月に発表した市場調査の結果によると、「タンパク補給食品」の国内市場は、2025年において推計で3000億円を超えるという。10年前と比較すると、その規模は実に約3倍。読者の中にも、忙しさの合間に手軽にタンパク質を摂れるのなら、とこれらの商品を手に取った経験がある方は多いのではないだろうか。
食品メーカーの巧みなマーケティングも相まって、人々の健康意識すら変えつつある目下の“プロテインブーム”。
その流れに対して一石を投じる研究論文が、著名な学術誌『セル・プレス・ブルー』に掲載されたのは、今年8月のことだった。
“老化現象”が進む
「ウィスコンシン大学のチームによる研究で得られた結論は、“必要以上のタンパク質摂取は、健康に悪影響を及ぼす可能性がある”というものでした」
と、今井氏は語る。
「マウスや昆虫、酵母などのさまざまな生物を対象とした350件以上の研究を検証した結果、過剰なタンパク質の摂取は健康や美容に良いどころか、かえって細胞の酸化や代謝悪化などの“老化現象”が進むリスクがある、ということが確認されたのです」(同)
論文では特に、運動量の少ない成人が必要以上にタンパク質を摂るリスクに対して、警鐘が鳴らされている。
「研究では、高タンパク質の食事が、長寿や病気への抵抗力を担う一部の細胞の機能をかえって“抑制”してしまう可能性が示唆されています。逆に、マウスを使った実験から、タンパク質の摂取を減らすことで、加齢に伴う病気のリスクが下がり、寿命も延びることが確認されました」(同)
“不自然なタンパク質”
タンパク質の過剰な摂取によるリスクはそれだけではない、と指摘するのはAGE牧田クリニックの牧田善二院長だ。
「第一の健康リスクは、腎臓の機能が悪化して、ひどい場合には透析が必要な生活になってしまうことです。タンパク質をたくさん摂取すると、アミノ酸を過剰にろ過することで腎臓は疲弊してしまいます。1981年にハーバード大学のブレンナー教授が研究論文を発表して以降、腎臓病学会では定説です」
特にプロテイン飲料などの加工された高タンパク食品は、腎臓への負担がさらに大きくなる。
「それらに多く含まれるのは粉末やゼリー、液状のタンパク質であり、人工的に作られたものです。天然の肉や魚に含まれるものとは生化学的な組成も異なるため、“不自然なタンパク質”ともいえる。仮にそれらが牛乳や大豆由来の製品であっても、たくさん摂り続ければ、腎臓を悪くする危険があります」(同)
慢性的な倦怠感と足のむくみ
一方、医療法人社団好也会さいとう内科クリニックの斉藤雅也院長が指摘するのは、肝臓への悪影響だ。
「過剰なタンパク質は、消化・吸収の過程で有毒な物質であるアンモニアを生成します。それが血管を通じて肝臓に運ばれると、“尿素サイクル”という仕組みによって無毒化されますが、この作業が肝臓にとっては大きな負担になる。肝臓のキャパシティを超えてプロテインの過剰摂取を続けると、肝細胞が破壊されて、急性肝炎や慢性肝炎を患うリスクもあります」
急性肝炎はさらに悪化して「劇症肝炎」に転じると、高確率で命を落とす危険がある。
その一方で、
「プロテインの一般化により、最近は若い患者さんでも肝臓の数値が悪い人は増えています。そこで、一見健康そうな方でも特に油断できないのが慢性肝炎。こちらは“最近ちょっと仕事で疲れてるのかな”くらいの倦怠感しか感じないことが多いため、症状に気づかずに、プロテイン飲料などを摂取し続けてしまうリスクがあります」(同)
自覚がないままに、高タンパク質の食事が続くと、肝臓の“線維化”が進むおそれもあるという。
「わかりやすく言うと、徐々に肝臓が硬化してしまうのです。そうなると、慢性的な倦怠感や、足のむくみに悩まされることになります。この進行は不可逆なので、いったん線維化した肝臓は、現在の標準医療では元には戻せません」(同)
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新潮QUEで配信中の記事【専門家たちが警告「プロテインブーム」が覆い隠す、重大“健康リスク”】では、冒頭の女性が飲んでいた「ホエイプロテイン」に潜むさらなるリスクや、筋トレについて多くの人が抱く誤解、推奨される日々のタンパク質摂取の方法についてより詳しく報じている。


