3メートルの「壁」を跳び越えろ! 第1回「跳び箱選手権」の熱き闘い
目の前にそびえるのは30段まで積み重ねた跳び箱。その高さは320センチで、まさに「壁」だ。「世界記録」に相当するこの壁を目指して61人のチャレンジャーが挑んだ。9月20日、東京・立川市のアリーナ立川立飛で行われた第1回跳び箱選手権大会「立飛箱」の熱き闘いをリポート!
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【写真11枚】見上げるような「壁」を次々と…「跳び箱」超人たちの雄姿
たかが跳び箱、されど跳び箱
誰もが小学校の体育の時間に経験しているはず。でも、せいぜい7~8段の高さまでだろう。そんな子供の体操用具・跳び箱も18段を重ねると、その高さは2メートルを超える。踏み切りを間違えて跳び越えられず、抱きつくようにしがみついたまま跳び箱もろとも横倒しに崩れ落ちてしまうチャレンジャーも出てくる。
140センチ12段からスタートした競技は、1段(10センチ)ずつ高さを増していき、約4時間後にようやく25段(270センチ)に達した。それでもまだ脱落せずに残っていた21人のチャレンジャーたちの間にも、失敗が目立つようになってくる。
「クソ~。足が合わなかった~」
「さすがにこの高さになると、急に壁だわ」
失敗した誰もがそびえたつ跳び箱を悔しそうに見上げ、スマホで撮影した自分の映像を見て反省を怠らない。失敗してその場に四つん這いになり、床を叩いて悔しがる者もいる。そんな悔しがり方にも彼らの「本気」が伝わる。
一方、見事にクリアした勇者たちの喜びようもハンパない。着地するなり「よっしゃ~っ!」と絶叫する者、成功者同士で派手なハイタッチをして祝い合う者。そして、その姿を見つめるライバルたちからも「わ~お、すげえじゃん!」など賛辞が飛び交う。
言っちゃ悪いが、たかが跳び箱に賭けるその情熱がものすごいのである。
熱戦の第1回大会は時間切れで優勝者11人
ここまでの闘いで高校生や年長者は順に敗退していき、残ったのはほぼ体操経験のある20~30代の屈強な男子。彼らが跳び箱に情熱を傾ける大きな理由は、かつてテレビで放送されていた巨大跳び箱「モンスターボックス」の影響である。元体操選手の池谷直樹らが3メートル越えの跳び箱に挑むスポーツバラエティ番組に熱狂した人々だ。今回25段で敗退した20代男性もその一人。
「テレビで見て興奮して、跳び箱は僕の憧れです。今、跳び箱に2度目の青春をぶつけていると言ってもいい。跳び箱は熱くなれるんです。ここに来ているやつらもみんな同じだと思いますが、誰かに勝つことよりも自分の記録を塗り替えたくて、みんな必死になっている」
この跳び箱選手権を開催した全日本体操競技連盟の塚原直也会長(49)もモンスターボックスの熱狂を意識していた。
「誰にでも挑戦できる跳び箱は体操の楽しさを伝え、その裾野を広げるのに最適だと思う。今回はモンスターボックスとは違う『立飛箱』で実施される初の跳び箱選手権。世界記録の30段まで準備したので、楽しみながら記録に挑んでほしい」
大会係員が26段目(280センチ)の跳び箱をセットすると、勝ち残った18人が順番に新たな「壁」に挑み始めた。参加者全員が跳び箱の周りに集まり、その成否に一喜一憂する。敗れ去った者にも全員から「ナイスファイト!」の声援が飛ぶ。塚原会長の狙い通り、跳び箱を通じて会場は一体となっていた。
この26段目で7人の脱落が決定した時点で21時20分。22時までに会場を撤収しなければならないため、競技は終了。勝ち残った11人全員が優勝という裁定と、今回だけの特別ルールが発表される。
「最後に1人1回だけ、希望の段数にチャレンジしてください。クリアすれば記録 として残しますが、優勝はあくまで26段を跳んだ11人全員です」
11人の目がギラリと光ったように感じた。
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