出塁するだけじゃない 「1番」で35発、36発…球史を彩った“恐怖のトップバッター”

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 1番打者といえば、かつては俊足を生かして出塁し、塁上から相手バッテリーを揺さぶる“切り込み隊長”が定番だった。ところが近年、そのイメージは大きく変わっている。【久保田龍雄/ライター】

真弓真弓ホームラン

 象徴的なのがドジャース・大谷翔平の「1番・DH」だ。NPBでも今季、ソフトバンク・正木智也が1番打者として本塁打を量産し、リーグ3連覇の大きな力となった。しかも正木は盗塁をほとんど試みない。足よりも長打力で相手に重圧をかける、従来のイメージとは異なる1番打者として話題を集めている。

 もっとも、一発長打で試合の流れを変える“恐怖の1番打者”は、決して現代だけのものではない。過去にも「最強の1番打者」の称号がふさわしいトップバッターたちがいた。

 猛虎打線の核弾頭として、シーズン20本塁打以上を6度マークしたのが阪神・真弓明信だ。

 クラウン(現・西武)時代の1978年5月から1番に定着。翌79年、4対2の大型トレードで阪神に移籍すると、開幕戦から1番に抜擢され、自身初の2桁本塁打となる13本を記録した。

 移籍2年目の80年には、「フルスイングで叩け」という中西太コーチ(シーズン途中から監督代行)のアドバイスを実践。本塁打は29本と一気に増えた。

 6月25日の巨人戦で江川卓から先制の14号2ランを放つと、7月6日の大洋戦まで5試合連続本塁打を記録。巨人戦以外の4試合は3番で出場している。

 10月12日のヤクルト戦では、ダブルヘッダーで2試合連続の初回先頭打者本塁打。NPB史上初の珍記録も達成した。

 そして、セカンドからライトにコンバートされた85年には打率.322、34本塁打、84打点。主軸に匹敵する好成績を残し、チームの21年ぶりVに貢献した。

「この年、私の役回りはタイガースの“切り込み隊長”であった。出塁することはもちろんだが、同時に相手投手を威嚇し、恐怖感を植えつけるという役目があった。それをやれるのは、第一打席である。だから、私は先頭打者として打席に立つ時、フルスイングでガンガンいった」(自著『タイガースに捧ぐ』マサダ)

 ミッキーマウス・マーチの替え歌による応援歌「真弓真弓ホームラン 真弓真弓ホームラン」を懐かしく思い出すファンも多いことだろう。

 翌86年には7月1日の大洋戦から同6日の巨人戦まで、自身2度目の5試合連続本塁打。2度とも連続本塁打の達成日が7月6日という偶然も面白い。

 87年10月3日のヤクルト戦では、通算41本目の初回先頭打者本塁打を放った。福本豊(阪急)の43本に次ぐNPB歴代2位で、セ・リーグで記録した38本は現在も最多である。

異色の1番打者

 史上初となる「1番打者の本塁打王」にあと1本まで迫ったのが、2007年の巨人・高橋由伸だ。

 シーズン開幕前、5年ぶりのV奪回を目指す原辰徳監督は「1番はクリーンアップとともに簡単には変えられない」との強い信念の下、不動の1番打者づくりを重要課題に掲げた。

 オープン戦が始まると、亀井義行、脇谷亮太らを候補としてテストしたが、思うような結果が出ない。

 そこで、2年続けて故障で結果を残せなかった高橋に「リーダーとしてチームを引っ張っていってほしい」と奮起を促す意味も込め、3月15日のヤクルト戦から1番で起用した。

 01年にも3試合で1番を務めた高橋だが、「じっくりとボールを見るタイプじゃないから」とチャンスメーカー的な役割には消極的だった。

 だが、原監督は「スタイルは変えなくていい。巨人で初めての(シーズン)200本安打を達成してみろ」とハッパをかけた。1番打者として求めた役割は、「相手投手を観察し、後ろの打者に伝える」の1点だけだった。

 高橋は見事に期待に応える。

 3月30日の開幕戦、横浜戦で、開幕戦ではセ・リーグ史上初となる初回先頭打者初球本塁打を記録し、白星スタートを呼び込んだ。その後も先頭打者本塁打を連発。7月26日の横浜戦ではNPB新記録となるシーズン9本目を左翼席に叩き込んだ。前日にタイ記録へ並んだばかりで、すぐさま新記録達成である。

 同年は「ホントになんか、僕だけ(タイプが)違うよね」と異色の1番打者として、打率.308、35本塁打、88打点。主軸打者も顔負けの成績でリーグVに貢献し、楽天・野村克也監督を「オレならクリーンアップ(で使う)」と羨ましがらせた。

 巨人の全日程終了時点では、村田修一(横浜)と本塁打王争いのトップで並んでいた。ところが、村田が10月6日の広島戦で引退登板した佐々岡真司から36号を放ち、高橋はわずか1本差でタイトルを逃している。

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