「社長と会長が冷戦状態で…」データ不正「中部電力」に根付く経営の分断と機能不全

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 浜岡原発を巡り相次ぐ不祥事を受けて、社長、会長の両トップが辞任した中部電力。背景には、単なる「倫理観の欠如」にとどまらず、根深い経営の分断構造があったといえる。こうした同社内の内情に加え、経産省サイドの“本音”に迫った。(桜井燈/ジャーナリスト)

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不祥事の根本原因

 中部電力の浜岡原子力発電所(静岡県)の安全審査を巡るデータ不正問題は、ついに林欣吾社長(65)と勝野哲会長(72)の引責辞任に発展した。同社は政府の原子力規制委員会に提出していた浜岡原発3、4号機の再稼働に向けた審査申請も取り下げ、12年に及んだ同原発の安全審査は完全に白紙に戻った。外部の弁護士による調査報告では、審査の遅れを叱責する経営トップが現場に過度なプレッシャーを与え、安全データの不正に繋がったとされた。前代未聞の原発不正問題は、社内の論理を優先し、法令順守意識を欠いた企業体質を改めて浮き彫りにした。

 しかしそれ以上に、今回の不祥事の背景には、中部電力の特異な経営責任の分断構造が挙げられる。経営陣の中で事務系出身の林社長と技術系出身の勝野会長は冷戦状態にあり、大きな溝が生じていた。特に原発は技術畑の勝野氏が担当し、林氏は口出しできない二重の権力構造があったという。一方の林氏も電力販売を巡って公正取引委員会によるカルテル調査の対象となり、社長室が捜索を受けるなどしたが、それを勝野氏が社内で批判することはなかったようだ。こうした経営責任の分断構造が企業統治の空白を生み出していた。

「なぜ謝罪する側が勝手に指定してくるのか」

「度重なる不適切事案の発生により、御前崎市の皆様には多大なるご心配とご迷惑をおかけしております。心よりお詫び申し上げます」。

林氏は9月14日に開いた辞任会見の翌日、浜岡原発が立地する静岡県御前崎市の下村勝市長を訪ね、原発データ不正問題で地元住民に強い不信を招いたとして謝罪した。この日は鈴木康友県知事のもとにも赴き、原発不正問題を陳謝した。面会の中で林社長は「県民からの信頼を損なうものであり、原発事業者としての適格性を疑われる事象と痛感している」などと述べた。

 林社長はこのほかにも浜岡原発周辺の牧之原市や菊川市なども回って謝罪行脚した。だが、各自治体の反応は極めて冷淡だったようだ。ある自治体関係者は「中部電力からは『15日に林が謝罪に伺います』と一方的に通告された。なぜ、不祥事を起こして謝罪に訪れる側が、こちらに相談することなく、日時を勝手に指定してくるのか。中部電力の独善的な経営体質は以前と全く変わっていないと感じた」と憤る。

「規制委の要求は無理難題」

 林社長は辞任会見の席上、今回の原発不祥事を巡って外部の弁護士がまとめた調査報告書の内容を公表した。そこでは原発再稼働の審査を急ぐ経営トップらが現場職員を厳しく叱責していた様子が生々しく証言されていた。そして報告書は「経営陣が現場の事情を認識せずに安全審査の遅れを叱責したことが、担当者を心理的に追い詰めた」と指摘。それが原発の耐震設計のベースになる「基準地震動」(発生しうる最大の揺れ)のデータの不正操作に繋がったと結論付けた。

 中部電力の社内では「原発事業の実質的な責任者だった勝野会長の責任は極めて重い」との声が圧倒的だ。勝野会長は技術系出身のトップとして、早期の再稼働に向けた迅速な安全審査を指揮する立場だった。だが、実際の安全審査は原子力規制委員会の厳しい要求で審査期間が長期化し、多額の安全対策費用を投じても再稼働のメドが立たない状態に陥っていた。それが現場社員に対する厳しい叱責となり、いつしか規制委の要求を「無理難題」と勝手に判断し、データ不正を正当化する風潮がまかり通っていたようだ。

〈さらに深刻といえる、トップの責任を追及できない企業体質、そして経産省内で挙がる「再編」の思惑などについて、新潮QUEで詳報している〉

デイリー新潮編集部

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