この防衛政策は愛国どころか売国ではないのか 高市政権が進める「軍事AI導入」の知られざる恐ろしさ
一時期は言葉の軽さなどから人気に陰りが見えていた小泉進次郎氏への評価は、高市内閣で防衛大臣となってからはまた上昇気味だ。それまで彼を目の敵にしていた保守系メディアも「覚醒した」と持ち上げることが珍しくない。高市首相、小泉防衛相の強気の姿勢が支持を得ているという面もあるのだろう、菅、岸田、石破政権と比べて評価する向きも多い。
しかし本当に高市・小泉体制の安全保障政策は的を射たものなのか。そもそも、彼らが進もうとしている道をどれだけ理解している国民がいるのか。
ジャーナリストの烏賀陽弘道氏は、高市政権が導入を進めている軍事AIについて、強い警戒感を示している。「どの業界でもAI導入は当たり前だからいいんじゃないの」と軽く考えると、国を売り渡すことになりかねないというのだ。
「国を愛する」はずの高市首相が売国の輩になりかねない危険性すらあるというのは聞き捨てならない話だろう。以下、情報・教養サイト「新潮QUE」掲載の「防衛省の情報を「アメリカ」に預ける危険性が理解されていないのはなぜなのか(烏賀陽弘道)」をもとに見てみよう。(以下、抜粋して再構成したものです)
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機密情報を外国に預ける
今年8月13日に「日本政府が機密性の高い情報を外国製クラウドサーバーに預ける」という報道が流れた。
「政府は、政府機関が持つ機密性の高い情報を管理するため、民間企業が技術提供するクラウドサービスを新たに導入する方針だ。米国製のクラウドが候補になっている。政府は、自衛隊でAI(人工知能)の活用を進める考えで、機密情報を安全に管理できるかも課題となりそうだ。防衛省は8月末に予定する2027年度当初予算の概算要求に盛り込む方針だ」(同日付朝日新聞デジタル版)
政府情報の中でも、もっとも機密性が高いはずの軍事情報を、外国の、しかも民間企業のサーバーに預けるというのだから、驚いた人は多いのではないだろうか。
実はこの日本政府の新しい動きは「クラウドサーバー」だけに限った話ではないのである。ここには「AI」と「ドローン」というもう二つのキーファクターがひとつながりのものとして登場する。
2026年3月5日、午後3時20分から約25分間、高市早苗総理は「パランティア・テクノロジーズ社」のピーター・ティール共同創業者・会長と面会している。
「パランティア」は軍事用AIの開発会社である。今年2月28日に始まったイラン戦争で、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師が地下数十メートルのバンカー(地下壕)を出て、地上の部屋で革命防衛隊幹部らとの重要会議を開くのを検知して攻撃、暗殺に成功した。これに大きく貢献したのが同社のAIである。
現在、アメリカ国防総省の公式軍事作戦システムはパランティア社の軍事AIプラットフォーム「Maven Smart System」(メイブン・スマート・システム。様々なアプリケーションが載っているので以下パランティアAIと略する)である。
パランティアAIは何が優れているのか。AI化以前は8〜9つの個別端末に分かれていた偵察・分析・攻撃の手続きを、単一の地図画面に統合して出す。「偵察データ統合」「自動標的認識」「生活パターンの異常検知」を分析して「最適な攻撃手段の自動計算」(民間人がどれぐらい巻き込まれるかを含めて)「オススメ作戦計画シミュレーション」を一気通貫でやってしまう。米軍の2023〜24年の演習では、従来12時間かかっていた標的データの統合・処理をパランティアAIが1分未満でやってしまった。
また、かつてイラク戦争時には、テロリストの指導者など、戦場に現れてから数十分で隠れてしまう、あるいは逃亡する標的をリアルタイムで捕捉し、逃げられる前に攻撃部隊に伝達し、攻撃する作業は、約2000名が叫び声やメモの回覧でコミュニケーションしながらやっていた。ところがパランティアAIは、それと同等の作戦を20名(主に分析官)で終わらせることを可能にした。標的はテロリストでなくても、移動式弾道ミサイル発射機や、緊急浮上した潜水艦にも応用可能である。
日本の防衛省・自衛隊が導入を検討しているのも、このパランティア社のAIプラットフォーム「Maven Smart System」である。本稿執筆時点では未契約だが、採用の可能性は高い。実際に、2026年1〜2月にかけて東京・市谷の防衛省指揮所で行われた日米合同のシミュレーション演習では、パランティアAIがテストとして使われた(2026年6月25日付朝日新聞)。
1日20万冊の情報を処理できる
前置きが長くなった。日本政府が「軍事機密をアメリカ民間企業のクラウドサーバーに預ける」と言い出したのは、パランティアAIという軍事AIを使うための準備なのである。
なぜなのか。パランティアAIは処理する情報量がケタ違いに大きい。イラン戦争開始時には、アメリカ政府のパランティアAIは1日200億トークンを処理した。これは英語のペーパーバック本に換算すると、約20万冊である。これは単なるデータ通信量ではなく「AIが行った推論・思考・解読の総量」という意味だ。
このソフトを走らせて動作させるには、ハードウエア(サーバー)が必要である。しかし上記のような化け物AIなので、稼働させるには大規模な施設と維持管理が必要だ。
そんなデータセンターを持っているのは「グーグル」「アマゾン(AWS)」「マイクロソフト」「オラクル」の4大ビッグテック企業しか、存在しない。実際に、アメリカ国防総省が締結した最大90億ドル(約1兆3500億円)の「JWCC(合同戦闘クラウド能力)契約」では、4社の「防衛規格クラウド施設」にある機密対応クラウドの上にパランティアAIを載せて運用している。
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ここまでの説明を読んで、「実際に日本の業者が対応できないのならばアメリカに委託するのもやむなしなのでは」と疑問を抱く方もいるかもしれない。
しかし、その場合、預けたあらゆる情報はアメリカ政府に筒抜けになることを覚悟しなければならない、と烏賀陽氏は指摘している。技術的にも法的にも問題なくアメリカはそれを実行できる、契約書で縛っても何ら意味を持たないというのだ。
同盟国といえども、それは主権を売り渡すに等しい行為であることを政府は理解しているのだろうか――最先端軍事を巡る烏賀陽氏の解説は【防衛省の情報を「アメリカ」に預ける危険性が理解されていないのはなぜなのか〈前編〉】に詳しい。


