横綱はケガを負っても「休まず土俵に立つべき」なのか…歴代横綱の“休場日数”を調べて分かった意外な真実 本場所での“休場ゼロ”ながら27歳で亡くなった横綱も

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正しい相撲の楽しみ方

 さてもうひとつ、「横綱は本当に強いのか」を検証してみた。もちろん強くあってほしいのだが、現実はそうとも限らない。

 年6場所になった1958年1月から1961年11月(大鵬新横綱優勝)までの4年間24場所中、横綱の優勝は14場所。つまり他の10場所は大関以下が優勝している。その後は「横綱・大鵬の時代」となり、横綱が優勝する場所が続く。

 2000年1月から2003年11月までの24場所を見ても、横綱の優勝は11場所、大関以下が13勝と横綱は旗色が悪い。その後は横綱に昇進した朝青龍が強さを発揮する。歴史に名を残すような「強い横綱」が登場するまで、角界は群雄割拠、「下剋上さながらの戦いが展開されるからこそ面白い」「横綱が優勝するか、大関以下がこれを阻止するかに面白味がある」と理解する方が「正しい相撲の楽しみ方」のように思う。

 豊昇龍が横綱昇進後まだ優勝がないことを嘆くファンや関係者も多いが、怪我が癒えたらきっと賜杯を手にするだろう。その日をジッと待ち望むことがなぜ出来ないのだろう。

 在位中に優勝できず引退した横綱は過去にもいる。一番印象深いのは第66代3代目若乃花だ。小結で1回、大関で4回の優勝を経験しているが、11場所の横綱在位中は優勝できなかった。それでも今なおAbema TVの解説者として人気抜群だ。

 やはり解説でしばしば登場する芝田山親方(第62代大乃国)も、昇進3場所目に優勝したが、以後3年間(計20場所)は優勝に届かないまま引退した。

「横綱は10勝以上が最低の責任」と決まり文句のように言われる。日本相撲協会にそんな決まりはないのだが、「10勝できなければ進退問題になる」と、これも相撲ファンの了解事項のようになっている。栃錦以後、平均勝率を一場所の勝利数に換算して10勝に達しない横綱は6人存在する。この中で最低勝率は第72代稀勢の里で36勝36敗、休場97で勝率は5割ちょうど。次いで栃ノ海の8.95勝、3代目若乃花の9.24勝と続く。

「横綱は最低10勝」「常に優勝を争うべし」と期待されるが、実際にはそうとも言えない。

 9月場所はこの記事の配信当日(27日)に千秋楽を迎える。この原稿を書いている時点で横綱・大の里が久々に優勝争いのトップに立っている。大の里が自分の相撲を取り戻し、朝青龍、白鵬らに続く大横綱になり、豊昇龍がライバルとして「大豊時代」を築いてくれれば「強い横綱」の時代は復活するだろう。だが、大関・安青錦がいる、熱海富士が強くなっている、藤の川の強さも驚きだ。こうした力士たちと横綱との優勝争いが展開されるからこそ、大相撲は面白い。

スポーツライター・小林信也

デイリー新潮編集部

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