引退ラッシュの球界で来季も生き残るのは? 球団が手放しにくいベテラン3人の“現在地”

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ここ一番での集中力は凄い

 中村、岸と比べればまだ年齢的には若い。今年12月で38歳となる坂本勇人(巨人)は、ここへ来て来季の去就が騒がしくなってきたという。

 昨季は一軍定着以来最低となる32安打、打率.208に終わり、オフには大幅減俸となる推定年俸3億円の単年契約を結んだ。今季は開幕から一軍に帯同し続けているが、9月17日終了時点で60試合に出場して24安打、5本塁打、打率.178。数字だけを見れば厳しいシーズンである。

 その一方で、今年5月には通算300本塁打を達成。7月には通算8本目のサヨナラ本塁打を放ち、セ・リーグ記録に並んだ。通算安打数でも現役最多。かつてのように毎年タイトルを争う数字ではなくなったとはいえ、球史に残る記録を今なお積み重ねている。

 単純に打率だけでは測れないものがある。長年巨人の中心選手としてプレーしてきたスターであり、勝負どころで打席に立った時の存在感はいまだに大きい。プレーについての評価も決して低くないという。

「打率は確かに低いですが、ここ一番での集中力は凄いものがあります。チャンスで打席に入った時の球場の盛り上がりは凄いですよね。サードの守備は十分に戦力と言えるレベルです。ずっと一軍にいるのは、勝負強さや守備を評価されているからでしょう」

 得点圏打率はシーズン打率を1割以上上回る.308。勝負強さはまだまだ健在だ。9月5日の広島戦では延長11回に代打で出場し、試合を決定づける2点タイムリーツーベースを放った。守備でもここまで失策0と安定感を見せている。

 レギュラーとして毎試合出場する役割からは遠ざかりつつある。それでも、勝負どころの打力に加え、三塁守備まで考えれば戦力として使い道はある。何より、長年チームの顔を務めてきた坂本は、単純に数字だけで去就を決められる選手ではない。

 それでも現役続行が安泰とは言い切れない。理由の一つが、来季の監督人事である。

「大きいのは来季の監督が決まっていないことですね。過去には高橋由伸が引退して、いきなり監督に就任した例があります。坂本についてはさすがにそういうことはないと思いますが、監督人事によって編成が大きく変わることはあります。坂本は現役では生え抜き最大のスターですから、当然将来は指導者としての期待がある。新監督次第ではコーチ就任を打診される可能性はあるでしょう」

 巨人の山口寿一オーナーは9月16日に行われた12球団オーナー会議後、来季の監督人事について「全く決まっていない」と答えている。表向きは白紙の状態でも、水面下ではさまざまな動きが進んでいるはずだ。

 坂本ほどの実績を残した生え抜きのスターとなれば、今季の成績だけで去就が決まるとは考えづらい。現役を続けるのか、それとも将来の指導者就任を見据えた動きが出るのか。監督人事や来季の編成方針が、その判断に影響することは十分考えられる。

 中村、岸、坂本。3人とも全盛期と同じ立場ではない。それでも、一発を期待できる打力、試合を作る先発としての技術、勝負どころで発揮する集中力と、それぞれ違った形で現在のチームに価値をもたらしている。

 引退発表が相次ぐ今季の球界で、彼らが来季も戦力として必要とされるのか。残り試合での働きだけでなく、各球団の編成方針も含めて、その去就に注目したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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