「ここまで露骨に進められるとは…」一松旬氏に留まらず「内閣府」でも進む、高市政権による“財務省外し”の衝撃人事とその背景
今夏の霞が関人事をめぐっては、財務省のエースと称される一松旬氏の東京税関長就任が、いわゆる「高市人事」の一つの象徴とされた。しかし財務省への“睨み”はこれにとどまらない。同省が主導権を握ってきた内閣府においても、露骨な「財務省外し」が進む。その背景にあるものとは――。(桜井燈/ジャーナリスト)
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高市早苗政権が内閣府の改革に乗り出している。内閣府は予算編成に向けた基本方針となる「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)を策定するほか、首相が議長を務める「経済財政諮問会議」の事務局を担い、政府におけるマクロ経済政策の司令塔と位置付けられている。ただ、その実態は人事を通じて財務省が主導権を握っていたため、高市首相が今夏の幹部人事でこの内閣府に思い切ったメスを入れた。
財務省出身の事務次官が退任するのに伴い、後任として旧経済企画庁出身者を次官に起用したほか、次期次官を狙う内閣府審議官に初めて経済産業省出身者を抜擢。さらに骨太の方針の策定で中核を担う経済社会システム担当の政策統括官にも初めて経産省出身の幹部を起用するなど、内閣府の「財務省外し」を進めている。これで政府のマクロ経済政策の主導権が財務省から経産省に移るのは確実視されており、霞が関の勢力図が大きく塗り替えられようとしている。
財務省に走った衝撃
内閣府は7月末、財務省出身の井上裕之事務次官が退任し、後任に旧経済企画庁出身の林幸宏内閣府審議官が昇格する人事を公表した。すでに井上氏は次官を2年務めており、退任は既定路線だった。そして内閣府ナンバー2である内閣府審議官を2年前から務める林氏が予定通りに次官に就いた。
しかし、財務省には衝撃が走った。
林氏の後任の内閣府審議官に、経産省から出向して内閣官房にある日本成長戦略本部事務局長代理を務めていた木村聡氏が抜擢されたからだ。経産省から内閣府審議官が起用されるのは今回が初めて。高市政権が誕生して以来、財務省の凋落ぶりが鮮明になっている。
内閣府の事務次官にはこれまで、財務省や旧経企庁、旧自治省、それに厚生労働省などから起用するのが通例だった。各省から派遣されて内閣府で局長などを務め、内閣府審議官を務めた後、事務次官に昇格するのが順当なルートだ。今回も内閣府審議官が次官に昇格しており、経産省出身の木村氏は早ければ来年夏にも同省出身者としては初めて内閣府の事務次官に就任する可能性が一気に高まっている。同氏は今年1月、他の幹部とハイヤーに乗車中、事故に遭って大怪我を負い、長期入院を余儀なくされた。ただ、その後は現場に復帰し、高市政権の目玉政策である日本成長戦略の具体化に取り組んでおり、首相の期待は極めて大きいようだ。
「露骨な財務省外し」の背景
一方の財務省は、同省出身で経済社会システム担当の阿久沢孝政策統括官を今夏の幹部人事で内閣府審議官に昇格させる腹積もりだった。だが、阿久沢氏は財務省への復帰が決まり、理財局長に就任した。さらに阿久沢氏の後任も経産省から派遣されていた浦上健一朗内閣府官房審議官が昇格した。これによって財務省が内閣府に派遣していた局長級以上の幹部がすべて姿を消すという前代未聞の事態となった。財務省関係者は「ここまで露骨に『財務省外し』が進められるとは思わなかった」と肩を落とす。
高市首相の狙いは明白である。内閣府は経済財政諮問会議の事務局を務め、政府のマクロ経済政策の取りまとめ役となっている。ただ、その裏では財務省出身者が代々、内閣府の要職を占めることで同省が政府全体のマクロ経済を取り仕切ってきたのが現実だった。高市首相はこの構図を断ち切るため、財務省出身者を内閣府から排除するという思い切った人事を断行したのだ。
〈こうした人事構想を首相に進言した“経済ブレーン”の暗躍や、今後の内閣府、財務省などについて、新潮QUEで詳述している〉


