選手を励ますはずの声援はなぜ“暴走”するのか プロ野球で物議を醸した「応援騒動」
スタンドからの声援は、時に選手を奮い立たせ、球場の空気さえ変える。だが、熱が入りすぎるあまり、応援が思わぬ形で“一線”を越えてしまうこともある。【久保田龍雄/ライター】
横断幕に「全員死刑」
8月29日の阪神対巨人では、7回に森下翔太が死球を受け、代走を送られてベンチに下がると、一部の巨人ファンが「最高です!」と記されたタオルを振り、SNS上で「非常識極まりない」などの非難が相次いだ。
6月21日の巨人対中日でも、8回に浦田俊輔がエラーを犯した直後、中日ファンの「いいぞ!浦田!」コールが物議を醸した。いずれも対戦相手への礼を失したパフォーマンスだが、過去には自軍への不適切な応援が問題になったケースも何度かある。
監督解任問題などをめぐるゴタゴタから、一部のロッテファンが球団を非難する過激な内容の横断幕を右翼席に掲げたのが、2009年9月25日からのオリックス3連戦である。
同年は、ボビー・バレンタイン監督が高年俸などを理由に「今年限りで退任」と取り沙汰されたことから、シーズン開幕後、ファンがメッセージボードや横断幕をスタンドに掲げ、続投を訴えていた。
その後、バレンタイン監督が同年限りでの退団を表明し、一時は沈静化していたが、シーズン最後の週末となる本拠地でのオリックス3連戦を迎え、5位と低迷するチームへの不満と併せて再燃した形だ。
翌26日には、心ないファンが球団幹部3人を名指しで「全員死刑」と大書するなど過激な横断幕を掲げ、プレーする選手たちをイライラさせた。
西岡剛もその一人だった。「初回の打席に入ったときから目に飛び込んできた。そこ(横断幕)に打ち込んだろかと思った」と怒りを込めてバットを振ったところ、球団新記録となるシーズン7本目の先頭打者本塁打が右中間席に飛び込んだ。
結果的にこの一発が決勝点となり、ロッテは6対2の勝利。試合後、お立ち台に呼ばれた西岡は「選手のプレーを見て、将来プロになりたいと夢見る子供たちも見に来ている。ああいう中でプレーしたいと思う少年はいない。子供たちの夢を壊さないでください。本当にロッテを愛してくれているのなら、明日から横断幕を下げてください」と声を詰まらせながら、スタンドのファンに訴えた。
ところが翌27日のオリックス戦、フロント批判の横断幕はほとんど姿を消したものの、「二日酔いで試合サボリ、夢を語るスピードスター」など、西岡を揶揄する横断幕がお目見えし、ブーイングを浴びせるファンもいた。
だが、ファンの大半は自然発生的に“剛コール”を贈り、その声援はブーイングを上回った。
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