選手を励ますはずの声援はなぜ“暴走”するのか プロ野球で物議を醸した「応援騒動」
働けコール
2023年6月14日の巨人対西武では、西武ファンが自軍の選手に「働け!」とコールする騒動が起きた。
松井稼頭央監督が就任した同年、山川穂高が5月に女性問題をめぐって登録抹消されるなど、4番不在のチームは得点力不足から低迷。前日も巨人に0対3と完封負けし、3連敗でリーグ最下位に沈んでいた。
この日も序盤で3点のリードを許し、ファンのフラストレーションは溜まる一方だった。
1対4の4回1死無走者の場面で7番・金子侑司が打席に入ると、左翼席の西武ファンから「働け!働け!金子!」のコールが響きわたった。
2019年に2度目の盗塁王を獲得した金子は、同年オフに総額5億円超(推定)の4年契約を結んだが、21年に打率.192に終わるなど成績不振が続いていたことから、ファンの不満が“働けコール”という形で表れたようだ。
この打席で金子は空振り三振に倒れ、2死後、古賀悠斗も右飛で3者凡退に終わると、一部のファンからブーイングが起きた。
この日も西武は元気なく1対7と完敗。SNS上では「働けコール」がトレンド入りし、「選手にもファンにも失礼」「ヤジと変わらん」など批判の声が相次いだ。
その後、「西武ライオンズ応援団」のツイッター(現・X)が更新され、「今日の応援のコールに関してまず謝罪したいと思います。応援団としてみなさんを引っ張っていく上で最悪でみっともないコールをしたことをお詫び申し上げます。金子選手に対しても無礼なコールだったと思います」と謝罪文を掲載した。
そして翌15日の巨人戦、長谷川信哉、金子が2回に連続犠飛を放ち、2点を先制。スタンドの西武ファンから盛大な“金子コール”が沸き起こった。レフトの守備位置に就いた金子も帽子を取って一礼し、応援するファンと心を通わせた。
もっと強くなることを考えろ
チームの応援歌の歌詞に「不適切なフレーズがある」とクレームをつけたのが、中日・与田剛監督である。
2019年のシーズン中、ピンク・レディーのヒット曲の歌詞を変えた人気応援歌「サウスポー」の「お前が打たなきゃ誰が打つ」の部分について、「『お前』という言葉を子供たちが歌うのは、教育上良くないのではないか」と疑問を呈し、球団を通じて「お前」を選手名に変えられないかとの意向を応援団側に伝えたことが発端だった。
これを受ける形で中日応援団は7月1日から「サウスポー」を当面の間、自粛することを発表した。
だが、他球団では選手個人の応援歌で「お前」が使われている例も少なくないだけに、ファンは反発。言い出しっぺの与田監督は、チームも5位で低迷中とあって、ネット上で「そんなヒマがあるのなら、もっと強くなることを考えろ」などと叩かれ、“お前騒動”に発展した。
与田監督は「僕は単純に『お前』という表現よりは名前のほうにしてもらえませんかというのがことの発端なので。シンプルにそこだけです」と困惑の態で説明。「自粛してほしい」「やめてほしい」と言ったわけではなかったが、監督自ら応援のあり方に注文をつけるという異例の行動が、余計に反感を買った感もあった。
その後、「サウスポー」は2022年に就任した立浪和義監督が「我々は応援してもらっている立場。別に自分はそんなに気にはしないですよ」と容認し、約3年ぶりに復活した。
明らかに不適切な応援ならともかく、「お前」のように必ずしも不適切と断定できない問題もある。改めて応援のあり方の難しさを考えさせられる。











