「一番困難な人にどう接するかで、その国の本質が見える」 石破茂前首相が語った「防災庁が絶対に必要な理由」

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 毎年のように大地震、水害に襲われている現状を見れば、防災を専門とした官庁、防災庁を設置することは必然とも言える。その設置は石破茂前首相の悲願とも言えるものだったが、長年、党内でも異論は多く、実現にはかなりの時間がかかった。

 実は高市早苗首相もかつて、総裁選(2021年)における討論の場で、防災庁に関しては「新たな縦割りを生んでしまうのではないか」と述べ、慎重な立場を示していた一人である。しかし首相就任後には、「世界有数の災害大国である我が国において、(略)国難級の災害の発生が切迫する中、人命・人権最優先の『防災立国』の実現が急務」との立場で防災庁設置を積極的に進めている(防災立国の推進に向けた基本方針より)。

 直近のロング・インタビュー(情報・教養サイト「新潮QUE」掲載)で石破氏は、なぜ長年、防災庁設置を訴え続けたのか、その思いを隠すことなく語っている。

 背景としてあるのは、世界の先進国との「差」である。たとえば被災者への対応一つとっても、日本は先進的とは言いづらい面があるという。

「(日本と同じ地震国であるイタリアでは)地震が起こると、早ければ即日、遅くとも48時間以内にコンテナトイレ、家族単位で暮らせるテントやキッチンカー、簡易ベッドが運ばれてくる。

 キッチンカーにはボランティアのシェフがいて、イタリア料理のフルコースを温かいまま提供する。ワインも出す。

 日本ならば、ともすれば『贅沢だ』と言われそうですが、彼らの考え方は違います。

 家族も犠牲になった、家も壊れてしまった、仕事もどうなるか分からない、ある意味絶望の淵にある人たちを励ましていくために、そういうものは必要なのだという考え方です」(同インタビューより)

 被災者に我慢を強いる風潮、避難所の環境の悪さ、命を守ることに直結するシェルターの整備が進んでいないことなど、日本の抱える課題を挙げたうえで、石破氏は、こう語る。

「以前から、私は、この国はもしかすると弱者には冷たい国なのではないかという疑念を持っていました。国民性の話をしているのではありません。あくまでも政府が国民の命をどう考えているのか、という問題です」(同)

 そそっかしい人には「反日的」と反発されそうな発言だが、その真意はまったく異なる。以下、新潮QUE掲載のインタビューから抜粋してみよう。

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 よく例に出して話すのは東京大空襲です。1945年3月10日、アメリカ軍の無差別爆撃によって一晩で10万人の命が奪われました。爆撃の指揮官はカーチス・ルメイです。無差別爆撃自体は悪魔のような所業ですが、しかしどうもルメイのほうもそこまでの犠牲が出るとは思っていなかったという。

 というのも、その前月、ドイツのドレスデンも3日にわたって空襲したけれども、犠牲者は2万5000人とされています。日本よりも日数は多いのに、犠牲者数は4分の1です。

 防衛庁長官時代、有事法制を作るにあたり、アメリカの爆撃報告のレポートを読んだことがあります。かなり分厚いものでした。そこに書いてあったのは、日本政府は人の命をまったく大事にしない、ということでした。

 その根拠として挙げられていたのが、戦前の防空法。空襲時に爆撃地から逃げることを禁じ、危険の中、消火活動を市民の義務とする法律でした。基本精神は「戦地で兵隊さんが戦っている時に、空襲に遭ったくらいで逃げるとは何事だ!」ということですよ。だから市民は逃げるのではなく、バケツリレーをして鎮火をせよ、となっていた。焼夷弾をバケツリレーで消火できっこないことは、今の私たちは知っていますが、当時は知らされていませんでしたから、これもまた死傷者を増やすことにつながったのだと思います。

「兵隊さんが戦っているのに何事だ!」と「災害の時に(被災者が)ぜいたくを言うとは何事だ!」は似ているじゃないですか。

 日本のように「被災者は冷たいお弁当でも仕方がない」というのと、イタリアのように「絶望している人にこそ希望を与えられるような食事を」というのと、どちらが良いのかなど、考えるまでもありません。

 私は一番困難な人にどう接するかで、その国の本質が見えるのではないかと思うんです。そういう人にこそ国が手を差し伸べるべきだと。

 防災を強化すべきだという考えの根底にはこれがあります。

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 残念ながら日本が災害から逃れることはできない。被災して「一番困難な人」に適切で温かな手を差し伸べられる防災庁であってほしいと願わない人はいないのではないか。

 石破氏のロング・インタビュー(「実はこの国は弱者に冷たいままなのではないか」 石破茂前首相が明かす「防災庁」への執念)では、この他、幹事長人事の真相、首相公邸の住み心地から、首相という仕事の激務ぶりまで、驚くほど率直に語られている。

デイリー新潮編集部

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