AIに仕事を奪われる時代に私たちは何を磨けばいいのか――30代・40代が直面する「2040年の分岐点」

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「半分の仕事がAIに置き換わる」――そんな予測が飛び交う時代に、あなたはどう備えているだろうか。日本共創プラットフォーム(JPiX)会長の冨山和彦氏は、「半分で済んだらいい、という感覚です」と指摘する。定型的なデスクワークはもちろん、エンジニアのコーディングまで、生成AIは猛烈な勢いで人間の仕事を代替しはじめている。しかし冨山氏は、この変化を「悲劇」と見ていない。問題はAIの進化にあるのではなく、“AIが来ても変わろうとしない個人と企業”にある、と――。

新しいテクノロジーは、必ず新しい仕事を生んできた

「産業革命は、機械に仕事を奪われると恐れた労働者が機械を破壊する『ラダイト運動』を生みました。しかし結果として、産業革命はブルーカラーの雇用を増やした。1990年代のIT革命は、ホワイトカラーの労働需要を世界規模で創出しました。自動車の発明は、それまで存在しなかった運転手・整備士・ガソリンスタンドという仕事を無数に生み出したのです」(冨山氏、以下同)

 テクノロジーの歴史は一貫して、「既存の仕事を壊しながら、新しい仕事を創る」という繰り返しだった。冨山氏は、AI革命もこの文脈で捉えるべきだと言う。

「AIは人間の『脳の働きの拡張』をもたらす、一種の産業革命です」

 ただし、今回は一点、明確な現実が伴う。

「定型的なホワイトカラーの仕事は、AIに確実に置き換えられます。これは議論の余地がありません。問われるのは、“AIがコモディティ化した世界で、何が新たな価値を持つのか”ということです」

「誰がお金を払うか」を問えない企業と個人が危ない

 冨山氏が最も懸念するのは、JTC(日本の伝統的大企業)で働く人の先行きだ。

「大組織の中で長く生きてきた人ほど、“誰が自分の仕事にお金を出しているのか”という感覚が薄れていくからです」

 年功型終身雇用も、弱点となり得るという。

「制度は一度できると“自己強化”し、時代が変わっても生き延びようとする。しかしAIが進化する時代に、年功型終身雇用を守り続けることは不可能です。守れもしない約束を続け、会社のお金がなくなってから“次の仕事を探してくれ”と言うほうが、よほど残酷です」

 経営者がやるべきことは明確だという。

「“うちの会社はこういう領域で付加価値を作る”、“欲しいのはこういうスキルだ”と、方針をはっきり示すことです。『とりあえずAI活用』で資料作成を効率化しても、余った時間を従来通りに使えば会社は何も変わりません。真の変革とは、工数が4分の1になったならその分、人員も組み替えて、別の価値創出に人材を移す判断をすることです」

AIに「置き換わらない仕事」の正体

 では、AIに代替されない仕事とは何か。冨山氏は「身体性を伴う仕事」だと指摘する。

「医師やパイロットはもちろん、現場に足を運んで一次情報を取ってくる記者の仕事もそうです。すでに出回っている情報をまとめる“こたつ記事”はAIで書けてしまうが、生きた現場から情報を掘り起こす行為には、どんな時代にも価値が宿ります」

 世界では今、ホワイトカラーよりブルーカラーの求人倍率が高くなっている。

「介護・看護・土木など、慢性的な人手不足の領域では賃金は上昇方向にしかありません。仮にそうした職種における単純作業をAIやロボットが担うようになれば、人間は高付加価値な領域に集中できるようになります」

 日本企業に根強い「自社の熟練知があれば勝てる」という思い込みにも、冨山氏は警鐘を鳴らす。

「熱波に悩むヨーロッパで、高性能な日本製エアコンより中国製が売れているのは、壁に穴を開けられない古い家でも窓からホースを出すだけで使えるからです。“いいもの”の定義はメーカーではなく、お客さんが決めるのです」

30代・40代は「逃げきれない」――2040年に向けて今すべきこと

 2040年、AIネイティブ世代が社会の主役になる頃、日本は「明治維新後の西南戦争」のような大変革の最中にあると冨山氏は読む。

「55歳以上は逃げきれるかもしれません。しかし30代・40代は、“今の会社を勤め上げて年金をもらう”という前提を今すぐ手放すべきです」

 そして個人に求められるのは、AIを「ボスの立場」から使いこなす能力だという。

「AIに勉強を任せすぎれば、自分が賢くなることをサボることになる。AIを部下として使いこなし、人々の福祉のために制御できるかは、使う側の英知にかかっています。リベラルアーツや実践知を“身体化”し、先人の知恵を自分の思考に引用できる力こそ、AIが代替できない人間の武器になるのです」

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 日本は過去、明治維新という大変革を成し遂げた歴史を持つ。「腹をくくって変わると決めれば、現実は変えられる」と、冨山氏は言う。

 新潮QUEで配信中の記事【30代と40代は「AI革命」から逃げきれない――2040年を「残酷な未来」にしないために企業が問い直すべきこと】では、2040年を「残酷な未来」ではなく「黄金の未来」にするための処方箋を、冨山和彦氏がより詳しく語っている。

デイリー新潮編集部

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