「踊る大捜査線」劇場版8作品を一挙放送の大判振る舞いも…伝説の“連続ドラマ版”はもう地上波で放送されないのか
ドラマ版の魅力
「97年1月期に放送されたドラマ版は、全11話の平均世帯視聴率18.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区。以下同)を記録し、最終回は全話最高の23.1%を獲得しました。織田さんが演じた青島俊作は、脱サラして警察官になった異色の主人公。事件を追うだけではなく、青島の目線を通して警察組織が抱えるさまざまな矛盾を描きました。とりわけ、厳格なキャリア制度や官僚主義、縦割り行政、民事不介入といった現場で起きている問題を真正面から取り上げたことで、従来の刑事ドラマとは一線を画す作品となりました。最終回に向け視聴率が上昇する中、番組スタッフが当時の上司に対して、『最終回の視聴率が20%を超えたら映画化してよい』との約束を取り付け、それがかなったことから映画化が実現したのは有名な話です」」(フジテレビ関係者)
ドラマの成否の鍵を握るのは、ストーリーや構成はもちろんだが、何より視聴者を惹きつけるキャラクターとされる。「踊る」シリーズはその点でも優れていた。
「深津絵里さん(53)演じる恩田すみれ、故・いかりや長介さんの和久平八郎、北村総一朗さん(90)の神田署長ら“スリーアミーゴス”、そしてキャリア官僚の室井慎次など、クセもあり魅力もある個性的な登場人物が数多く登場しました。青島をはじめとする登場人物それぞれの人間関係は、連続ドラマを見なければ十分には伝わりません。ドラマ終了後も作品への思いが冷めなかったファンが劇場へ足を運んだからこそ、劇場版第1作がヒットし、その勢いが『踊る2』の空前の大ヒットにつながったのです」(同前)
ドラマ版の再放送は2024年9月、室井慎次シリーズ「敗れざる者」「生き続ける者」の映画公開に先立ち、連続ドラマ版全11話に加え、過去のスペシャルドラマも一挙に放送された。さらにその後はTVerや、フジテレビの動画配信サービス・FODでも期間限定で無料配信されているので、見ることができないわけではない。
だが今回の9作品一挙放送のニュースに際し、SNSでは「どうせやるなら、ドラマシリーズも見たい」「すべての原点はドラマにあるのだから、もう一度見たい」「スペシャルも含めたドラマ版を放送してほしい」という声が多く寄せられた。
「例えば、主要キャストが不祥事を起こしたり、芸能界を引退したりするなど、権利上の問題が生じた場合は作品が再放送されず、事実上“お蔵入り”になるケースはあります。しかし、『踊る』シリーズの主要キャストには、そうした事情はありません。新作映画には和久平八郎も恩田すみれも室井慎次も登場しません。彼らと青島俊作との関係性を改めて振り返ったうえで映画館に足を運びたいと考えていたファンも少なくないようです。それだけに、連続ドラマ版を改めて放送してほしいという声が高まっているのでしょう」(前出・放送担当記者)
コンテンツ戦略の変化が
なぜ、今回は地上波でのドラマ放送を見送ったのか――背景として考えられるのが、フジテレビのコンテンツ戦略の変化だという。
元タレント・中居正広氏(53)を巡る一連の問題を受け、フジテレビは経営体制を刷新。現在は清水賢治社長(65)の下、IP(知的財産)の価値を最大化することを経営戦略の柱の一つに掲げている。
「『踊る大捜査線』は、フジテレビが長年培ってきたドラマIPの中でも屈指のブランドです。現在も連続ドラマ版はFODで配信されており、同サービスにとって重要なコンテンツの一つとなっています。映画作品を地上波で放送し、作品に興味を持った視聴者をFODへ誘導、連続ドラマ版を視聴してもらう――。そうした役割分担を意識した編成である可能性はあるでしょう。IPをいかに収益へ結び付けるか――そうした方針の変化が、今回の編成にも反映されたとしても不思議ではありません」(前出・記者)
もっとも、配信重視の戦略には課題もある。
「動画配信サービスは、視聴者が自ら作品を探しにいく“能動的な視聴”が前提です。一方、地上波の再放送には、チャンネルを合わせた視聴者が偶然作品に出会い、その魅力に引き込まれるという効果があります。『踊る』が国民的人気シリーズへと成長した背景には、そうした偶然の出会いも少なからずあった。リアルタイムでドラマ版を見ていない若い世代にとっても、連続ドラマは作品の世界観や登場人物の魅力を知る最良の入り口と言えると思うのですが」(同前)
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