プロ注目・鈴木悠悟、その後ろにもいた“有望株” 中京投手陣が甲子園で残したインパクトの中身

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やっと自分の出番が来た

 甲子園で評価を一気に上げる投球とはならなかった。だが、スカウトにとって収穫がなかったわけではない。むしろ、鈴木の後を受けた2投手が強いインパクトを残した。

 一人目は西岡海心(3年)だ。岐阜大会では4試合、21回を投げて無失点と、鈴木を上回る成績を残している。

 霞ケ浦戦では6回途中から二番手で登板。7回に自らの暴投から1点を失ったが、2回1/3を被安打1。ストレートは自己最速を更新する145キロをマークした。

 試合後、西岡は追加点を奪われた悔しさを滲ませながら、ストレートについて「ブルペンから今まで一番良かったです。自己最速を更新したことは凄く嬉しかったです」と話した。視察していたスカウトからも「少しばらつきはありましたがストレートには力があって良かったですね」との声が聞かれた。

 180cm、71kgとまだ細身。体ができてくれば、球威やスケール感がさらに増してくる可能性は十分にありそうだ。

 そして、三番手で登板した福永龍矢(3年)にはさらに驚かされた。

 岐阜大会での登板は2回戦・多治見戦の3イニングだけ。それが甲子園では9回からマウンドに上がり、三者凡退、2奪三振と快投した。サイドスローから投げ込むストレートは最速144キロ。これまでの自己最速は141キロで、大舞台で一気に3キロ更新したことになる。

 試合後、福永本人に話を聞いた。

「去年まではサードとピッチャーを兼任していて、どちらかというと内野がメインでした。秋からピッチャーに専念して、腕の振りもそのタイミングでサイドにしました。冬の間にとにかくフィジカルを鍛えて、体重も半年で10kg増えて、それが真っすぐの強さに繋がったと思います。岐阜大会でもずっと投げたい気持ちはありましたが、鈴木と西岡が良かったのでなかなか出番がなくて、今日はやっと自分の出番が来たという感じで緊張よりも楽しみの方が強かったです。甲子園のマウンドは凄く投げやすくて、アドレナリンも出ていて、それが良い結果にも繋がったのかなと思います」

 冬の間に鍛えてきた言葉通り、175cm、80kgという数字以上に体つきはたくましく見えた。敗戦直後とはいえ、ずっと待っていた甲子園のマウンドで思い通りの投球ができたからだろう。晴々とした表情が印象に残った。

 進路は3人それぞれだ。鈴木は投手に専念してプロ志望を表明。西岡と福永は大学へ進み、その先のプロ入りを目指すという。

 高校時代にプロ入りしたエースの控え投手が、大学や社会人で大きく成長した例は決して珍しくない。今回の甲子園では、鈴木だけでなく西岡、福永もスカウトに強い印象を残した。

 数年後、3人の名前が揃ってドラフト候補として並ぶ可能性も十分にある。第4試合の終盤までバックネット裏に残っていたスカウトたちにとって、中京の投手陣の層の厚さを再認識する一戦になったのではないだろうか。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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