機体が地上に激突、火だるまで大破しながら回転…半数以上が助かり“奇跡”と呼ばれた「UA232便不時着事故」 緊張緩和のため上映された“喜劇映画”
乗客はいたって平静だった
232便は時折、横すべりをしたり、スリップするような感じで飛んでいた。少し気流の悪いところを通過する時のような揺れ具合で、「機体のコントロールがうまくできない訓練生が操縦しているかのようだった」と評した乗客もいる。
実際、第2エンジンで爆発が起きた直後、アル・ヘインズ機長は管制塔と次のような会話をかわしている。
「機首をコントロールすることが、ほとんどできない。左に曲がれず、大きく右に曲がるしかないんだ」
制御不能の状態になってしまったわけだ。これは1985年8月の日航機123便墜落事故と同じだが、232便は機首が上下左右に8の字を描くダッチロールに陥らず、機内もパニック状態にならなかったという。
「爆発音がして、高度がぐーっと下がった感じがした時は、おそらく乗客全員がハッとしたと思います。けれど、それ以降も乗客はいたって平静で、恐怖でパニック状態になったということはありません。客室乗務員にも浮き足立った感じは全然ありませんでしたよ。我々をリラックスさせようとしてか、イヤホンが配られ、短編映画が上映されました。上映されたのは、喜劇映画の『ケンタッキー・ダービー』でした」(獣医のロン・ローディ氏・39)
シートベルト着用のサインも点灯せず、立ってトイレに行くこともできたという。本を読み続けた人や、菓子を食べ始めた人もいた。
「ラフ・ランディング」の予告
こうしたリラックスムードが変わりだしたのは、最初の異変があってから約15分後。「やむをえず緊急着陸いたします。みなさん、冷静にしてください」というアナウンスがあってからのことだった。
石油会社に勤務するトーマス・エングラー氏のように、
「私は、ベトナムで従軍したことがあるから、緊急着陸も何回か経験したことがあるんだ。機内にいる間、“この飛行機の状態からすれば、クラッシュ(墜落)することはないだろう”と踏んでいたよ。だから、そんなに怖いとは思わなかったね」
という“猛者”はともかく、一般乗客が次第に不安感を高めたのも無理はなかった。クレジット・マネジャーのトム・ポストゥル氏(45)は、こう語る。
「緊急着陸のアナウンスに続いて、パイロットが“ラフ・ランディング(荒っぽい着陸)になるかもしれません”と言うんです。“これは車輪がうまく出ないということなのかもしれない”と少し緊張していたら、“ラフ・ランディング以上になる可能性もある”とアナウンスがあった。
これは、着陸の4、5分前のことで、客室乗務員が客室の方へ来て、安全姿勢の取り方などを直接に指示し始めました。両膝の間に頭をはさんで前屈姿勢を取れ、というものです。赤ん坊は親の足の内側に入れて、体を守ってやるように、ということでしたが、“あんなことで赤ん坊を守れるのだろうか”と思いましたよ」
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「心の中で妻に“さようなら”と言いました」――。第2回【大破した機体の外に「放り出された乗客の死体が散乱」…伝説の「UA232便不時着事故」で生存者が見た「戦場さながらの光景」】では、不時着の瞬間の機内や、生存者が見た凄惨な情景について伝える。
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