激化する報復合戦「プーチン大統領」は“亡国の最高司令官”となるか? ウクライナ侵攻でも露呈するロシア軍の“不名誉な伝統”とは

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「ワグネルの乱」とロシア軍の欠陥

 プリコジン氏は2023年に「ワグネルの乱」を引き起こし、ロシア軍の上層部に反旗を翻した。

「ワグネルの乱はロシア軍上層部に対する反乱であり、反プーチン運動ではありませんでした。プリコジン氏と彼の“私兵”は首都モスクワに行軍しながら、軍に蔓延する汚職などを厳しく糾弾したのです。しかしプーチン大統領が彼の“諫言”に耳を傾けることはなく、ベラルーシへの亡命を余儀なくされました。そして搭乗したジェット機が墜落する事故があり、死亡が発表されました。プーチン大統領が暗殺を命じたと見る専門家は少なくありません。いずれにしても『能力が高く、改革を志向する軍人』は独裁者にとって邪魔になることがあるのです。プーチン大統領は『命令に従う無能な軍人』を重用しており、これではウクライナ軍に勝てません」(同・軍事ジャーナリスト)

「とにかくプーチン大統領の命令に従う」という指揮官がウクライナの最前線で何をするかと言えば「プーチン大統領の指示待ち」だ。

 1分1秒の判断が生死を分ける戦場で、こうした指揮官に率いられた部隊に戦死者が続出するのは当然だろう。おまけにウクライナに展開する兵士は傭兵や囚人兵が中心だ。そもそも士気や能力が低い。

汚職が招いた大敗北

 軍事ジャーナリストは「ロシア軍が持つ根源的な欠陥を象徴したのが、ウクライナ侵攻の際、首都キーウ周辺で軍の車両が大渋滞を引き起こしたことです」と言う。

「もともとロシア軍は兵站が苦手という不名誉な伝統があります。最前線に必要な物資が届かないのも戦死者が多い原因でしょう。そして、あの渋滞は『プーチン大統領の命令がなければ車両は動かない』という事実を改めて明らかにしました。さらにプリコジン氏が批判した汚職の問題も大きな原因の一つです。ロシア軍では軍幹部が率先して予算の横領や物品の横流しに手を染めています。車両に必要な無線機が搭載されていないのは当たり前という状況です。中でもタイヤを勝手に売却することがあり、代わりに粗悪なタイヤを軍事車両に装着するのです。タイヤも渋滞が発生した原因の一つと考えられており、ウクライナ軍は渋滞中の車両を攻撃し、大きな戦果を挙げました。これと同じことが1939年にソ連軍がフィンランドに侵攻した『冬戦争』で起きています」(同・軍事ジャーナリスト)

 冬戦争は人口約370万人のフィンランドが、人口約1億7000万人のソ連を相手に100日以上持ちこたえたことで知られる。

歴史に学ばないプーチン大統領

 ソ連軍は、この冬戦争でも甚大な人的被害を出した。戦死者数は約12万から20万人と推計されているほか、重要なのは約26万人が負傷・凍傷したことだ。兵站が貧弱なため、必要な防寒具が最前線に届けられていないことが分かる。

 軍事ジャーナリストは「プーチン大統領は仮にもロシア軍の最高指揮官です。過去の戦訓に学ぶ必要があります。ところが実際はウクライナ侵攻で冬戦争と同じミスをしてしまっているのです。無能な指揮官と批判されても仕方ありません」と批判する。

 もし汚職の蔓延でロシア軍が弱体化しているのなら、その“原因”を取り去ればいい。プーチン大統領は強大な権力を持っているのだから、私腹を肥やす軍幹部を“粛清”するなど朝飯前だろう。ところが彼は、あべこべに黙認しているという。

 第3回【圧倒的な軍事力を持つロシアはなぜ“4年半が経っても勝てない”のか…プーチン大統領が潰した「軍改革」千載一遇のチャンス】では、プーチン大統領が汚職を摘発しない意外な理由や、過去の戦訓に全く学ばない“不勉強”な欠点を専門家が詳しく指摘する──。

デイリー新潮編集部

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