自民党役員人事を巡る暗闘――「維新一本足打法」の高市首相は“麻生切り”に動くか
国会で荒れ模様が続く中、次の自民党役員人事が高市政権の行方を決める上で重要度を増してきた。高市早苗首相は鈴木俊一幹事長の更迭に傾くが、その背景に滲む“維新との蜜月”が自民党内に軋轢をもたらしている。現状に鈴木幹事長の義兄、麻生太郎副総裁が黙っているはずもなく、政権の主導権を巡る「暗闘」は熾烈を極める。(竹場四郎/ジャーナリスト) ※文中敬称略
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7月7日の与党党首会談に臨んだ高市と維新代表・吉村洋文(大阪府知事)の表情は終始硬かった。野党の激しい抵抗に遭う衆院議員定数削減法案の今国会成立断念を事務的に申し合わせ、わずか7分という異例の短さでお開きに。関係者は「険悪なムードだった」と明かした。
高市は、気分が顔や喋り方に素直に現れる。報道陣の問い掛けに、手元のメモに目を落としながら感情を隠すように「詳細はお答えを差し控えさせていただきます」と短く答えた。
衆院定数削減法案は、「副首都」創設法案と並んで維新が主導する案件。与野党協議で1年以内に結論が出なかった場合、比例代表定数を自動的に45削減するという乱暴な内容だ。
しかし、高市は吉村の言い回しに倣って「連立合意のセンターピン」と公言し、配慮を示してきた。6日の自民党役員会でも「定数削減と副首都の法案は連立にとって枢要です。国会運営に万全を尽くしていただきたい」と呼び掛けた。
その直前には首相官邸幹部が定数削減に関し、「実現させておかないと総理の解散権を縛ることになる」と記者団の前で踏み込んでみせた。衆院解散をちらつかせ、党内を引き締める狙いだ。
身内の「裏切り」
「全部通すのよ」
終盤国会を迎え、与野党の攻防が激しくなった6月下旬以降、高市は情勢を報告する最側近の官房長官・木原稔らにこう指示し続けていた。「全部」とは維新印の2法案と皇室典範改正案、そして高市カラー案件の「国旗損壊罪」創設法案などだ。連立合意と衆院選公約を一つずつ実現することが、支持率の維持と党員の支持固めに繋がると信じている。
流れが変わったのは、高市がインド訪問に向けて羽田空港を発つ直前の7月1日午前、衆院議長の森英介が与野党7党の幹事長らを集めた会談だ。森は「互譲の精神」で早期に正常化させるよう促し、高市が出席する予算委員会集中審議と党首討論の実施へ「さらなる努力」を与党に求めた。
「私は絶対に出ないから!」
集中審議に応じれば、昨年の自民党総裁選で自身の秘書が他陣営中傷動画の作成に関与した疑惑などを改めて追及されるのは確実。森の発言を伝え聞いた高市は、キレ気味にこう語った。
森は、典範改正を何より重視する麻生の側近。官邸を外す形で調整が進んだ7党幹部との会談には、自民党の国対幹部が水面下で関与した。国会の空転は、秘書の「陳述書」提出により幕引きを図ろうとした高市自身の言動が主因だが、高市には身内の「裏切り」に映る。
「国会から求めがあれば出席して誠実に答弁してまいりました。その方針に変わりはございません」。カメラの前でにこやかに語り、ニューデリーに飛んだ高市だが、腹の中は煮えくり返り、号令一下で動く体制を敷く必要性を痛感していたのは間違いない。
森の要請を機に、典範改正案の優先審議が決まった。官邸幹部は異例の「議長介入」について「犯人が分かった」と周囲に語り、人事での報復を示唆した。
次期幹事長の座は
「7月に国会が閉じたら人事をしたい」
今年4月、高市は自民党役員改選と内閣改造について自民党関係者に密かにこう伝えた。執念を見せた2026年度予算の年度内成立がならなかった頃だ。
自民党の役員は9月に任期が切れるため、実現するなら2カ月ほどの前倒しになる。高市が人事の時期に言及したのはこれが初めてとみられる。同時に、鈴木の後任幹事長として「萩生田光一」の名も口にした。
鈴木は73歳。既に引退のタイミングを探っており、後継者となる秘書の長男を数年前に地元・岩手県へ送り込んだ。父で元首相の善幸が打ち出した「和の政治」を受け継ぎ、強引な党運営と無縁の存在だ。
高市には不満が募る。距離もできた。副首都法案の修正を決めた6月22日の与党党首会談に鈴木の姿はなく、木原が同席した。党首会談では幹事長が横に控えるのが慣例にもかかわらずだ。
現在、萩生田は幹事長代行。東京都議時代に「都議会のドン」と呼ばれた内田茂(故人)にかわいがられ、国政に出てからも元首相の森喜朗や安倍晋三に胆力や調整力を買われ、重用されてきた。旧安倍派(清和政策研究会)の裏金事件で失脚したが、復権の途上にある。
町村派と呼ばれた時代に清和研を抜けた高市とは、決して近い存在ではなかった。だが、仲間の少ない高市には、安倍の周辺にいたという共通項から萩生田に対して一定の安心感がある。
自民党幹事長は党の人事とカネを握る。選挙の公認、ポストの配分、資金の分配先を決める権限を持ち、政策立案や国会対策も差配できる。近年は二階俊博の率いた二階派が典型例だが、幹事長派閥が勢力を増やしたケースは多い。
昨秋の総裁選の勝敗に決定的な役割を果たした麻生が高市に求めたのは、突き詰めれば「鈴木幹事長」だけだったとされる。萩生田は麻生と気脈を通じるが、麻生・鈴木の関係とは濃さが違う。麻生との溝が深まれば、高市の政権運営はその分苦しくなる。
〈維新からの入閣候補や、そこにはらむ“波乱要因”などについて、新潮QUEで詳報している。〉


