まだ終わっていないのに…レイサム、マートンだけではない“勘違いプレー”の悲喜劇

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あってはならないプレー

 アウトカウントを間違え、併殺どころか三重殺を取られてしまったのが、2022年の阪神だ。

 4月27日の中日戦、2対1とリードしていた阪神は、4回無死一、二塁のチャンスで高山俊が一塁線を破るかという強烈な当たりを放った。しかし、これをビシエドに好捕されてしまう。

 ビシエドは一塁ベースを踏んで打者走者をアウトにし、飛び出していた一塁走者・山本泰寛も戻れずにアウトとなった。だが、話はこれだけでは終わらない。

 二塁走者・糸井嘉男もアウトカウントを勘違いしたのか、ベースを離れ、フラフラとベンチ方向へ歩き出した。そのためボールは二塁ベースカバーの京田陽太に転送され、あっという間にスリーアウトになった。

 慌てて帰塁を試みた糸井の足が、京田のタッチをかいくぐって二塁ベースを踏んだように見えたため、矢野燿大監督がリプレー検証を要求したが、判定は変わらなかった。絶好の追加点機を三重殺で潰すという最悪の結果に、矢野監督も「本当に恥ずかしい。あってはならないプレー」と怒り心頭だった。

ほんの小さなズレが

 球界のレジェンドたちも、時には勘違いを原因とする珍プレーを演じている。

 巨人・長嶋茂雄は、1960年8月21日の国鉄戦の5回1死一、二塁、王貞治の左飛でアウトカウントを間違えて一塁を飛び出し、二塁走者・藤尾茂を追い越してアウトになったプレーが有名だ。

 珍プレーとは無縁なイメージが強い王も、1969年4月18日の大洋戦では、8回無死一塁で打ち上げた遊飛を捕球されたと思い込み、ベンチに戻ろうとしたため、ボールが一塁に転送され、併殺の珍事を招いている。

 アウトカウントの勘違いは、プロであっても完全には避けられない。緊迫した試合展開、直前の打席での後悔、一瞬の思い込み。ほんの小さなズレが、ときに勝敗を動かし、長く語り継がれる珍場面を生む。

 もちろん、当事者にとっては笑い事ではない。それでも、時間が経てばどこか憎めない記憶として残る。完璧に見えるプロの世界にも、人間らしい隙がある。そこに触れられることも、野球という競技の奥深さなのかもしれない。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘! 激突! 東都大学野球』(ビジネス社)

デイリー新潮編集部

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