長嶋茂雄が落選危機…オールスターファン投票で起きた“まさか”の歴史
投手は井川慶、ムーアは打者で
2003年は、18年ぶりのリーグ優勝へ向けて独走していた星野阪神から、史上最多となる1チーム9人がファン投票で選出された。
その中で話題を集めた一人が、ムーアである。
先発投手部門で9位に入った一方、打力を買われて一塁手部門でも桧山進次郎(阪神)、清原和博(巨人)に次ぐ3位の43万7116票を獲得した。同じ年には、一軍登板ゼロながらインターネット上の“川崎祭”による大量投票で、川崎憲次郎(中日)が先発投手部門1位に押し上げられ、出場を辞退している。ムーアの一塁手部門上位も、川崎騒動と並んで注目された。
大学まで投打二刀流だった異色左腕は、来日1年目の前年、投手として10勝をマーク。大好きな打撃でも62打数17安打6打点、打率.274と打者顔負けの成績を残した。
翌2003年も、5月17日の巨人戦で4回に木佐貫洋から流し打ちの左前決勝タイムリーを放ち、1対0の勝利の立役者になった。開幕から無傷の7連勝を記録するとともに、打率.435の高打率をマーク。阪神ファンが「投手は井川慶、ムーアは打者で投票しよう」と考えても不思議はなかった。
しかし、同24日のヤクルト戦で2回をもたずにKOされ、連勝がストップしてからは、1カ月以上勝てない日が続いた。それまで室内練習場で打撃マシンを相手に打ち込むのがお約束だったムーアも、「自分は打撃で給料を貰っているんじゃない」と反省し、投手に専念するようになった。
その後、オールスターまでに3勝し、2年連続二桁勝利を記録したが、投球内容は今ひとつだった。結局、2年連続の球宴出場は逃している。
オールスターじゃなくて、オールスターダストや
ファン投票で選出されながら、最初で最後のチャンスが幻と消えたのが、楽天・松本輝である。
2007年、楽天から両リーグ最多の12ポジション中8人が選出された。第2戦がフルキャストスタジアム宮城で開催されることもあり、地元ファンの組織票が大きな追い風となった形だ。
だが、チームを率いる野村克也監督が「オールスターじゃなくて、オールスターダスト(星屑)や」と皮肉交じりに評したように、8人の中には成績が伴わない選手もいた。
中継ぎ投手部門で選出された松本も、同年は28試合で2勝1敗1セーブ3ホールドを記録していたが、防御率は6.11。不調のため、6月12日から二軍で調整していた。
さらに右内側内転筋を痛めていたことから、選出から4日後の7月6日、「故障の治療と調整でオールスターという特別な舞台で満足できるプレーができる状態にない」と広報を通じてコメントし、出場を辞退した。
1978年に組織票で日本ハムから9ポジション中8人が選出される“球宴ジャック事件”が起きた際も、世間の批判に配慮する形で2人が出場を辞退している。松本も結果的に、組織票への風当たりを和らげるために割を食ったと言えなくもない。
松本は翌2008年も中継ぎで21試合に登板したが、球宴出場の夢を叶えることなく、2010年限りで現役を引退した。
今年のファン投票でも、締め切りを前に動きが出ている。セ・リーグ先発投手部門では、ノミネート外からトップに躍り出た高橋遥人(阪神)を山野太一(ヤクルト)が逆転。捕手部門でも古賀優大(ヤクルト)がトップを奪うなど、ヤクルト勢の躍進が目立っている。
ファン投票は、時に実力や成績だけでは測れない熱量を可視化する。だからこそ、思わぬ逆転や大量投票が起こり、選ばれる側にも、投票する側にもドラマが生まれる。2026年の最終結果で、どんなサプライズが起きるのか。今年も投票の行方から目が離せない。
[2/2ページ]

