なぜ中学受験で夫婦仲は壊れるのか… 弁護士が明かす「中受離婚」3つの火種

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「塾代に金をかけるくせに、俺の小遣いは…」の衝突

 2の金銭トラブルもまた大きな問題だ。中学受験にかかわる教育費は非常に大きい。塾代だけで数百万円、それ以外の交通費、受験料などを考えれば相当な額に上る。

 先の弁護士の話だ。

「少子化もあり、近年の塾業界にはいろんな課金システムが用意されるようになりました。模試で偏差値が落ちたら有料の補講を受けさせる、クラス替えテストで点数が悪かった子に有料の再テストを用意する、夏期講習や冬期講習の合宿で個室を取る場合は追加料金を課すといったように、どんどん課金できる仕組みなんです。なので、家族によっては塾代が際限なく高くなっていくんです」

 推し活と同じで、親が中学受験に熱中すればするだけ課金額は青天井になる。そのことが夫婦間に亀裂を生むのだ。

 漫画『教育虐待』の取材では、次のような衝突の事例があった。

「なんで塾代にここまで金をかけるくせに、俺の小遣いや食費をここまで削られなければならないんだ!」

「私の両親は孫の教育費を払ってくれたけど、あなたのところは払ってくれなかったじゃない!」

「塾代は私の方が多く払ってきたんだから、志望校を決める権利は私にある!」

 受験に成功すれば、その後の入学金、授業料、習い事代、大学受験にかかる費用などもかかってくる。こうした中で夫婦の仲は険悪になっていく。

 弁護士によれば、離婚の際に、こうした教育費をどちらがどれだけ負担したかによって、財産分与など離婚後の金銭トラブルにもつながるそうだ。「塾代は自分の方が多く払ったのだから、マンションはもらう」などといった主張が生まれるのだ。

受験で傷ついた子供、責任のなすりつけ合い

 3の教育虐待に関しては、まさに現在、漫画『教育虐待』で連載している内容が、そのまま離婚に結び付く。

 親が受験にのめり込み、人格を否定するような言葉で罵ったり、思わず手を上げたりすることによって、子供が心に大きな傷を負う。

 受験を乗り越えたとしても、傷ついた子供は進学先で燃え尽き症候群のようになったり、現実から目をそらすようにゲームやSNS依存に陥ったりする。ひどい場合は、自己否定感やトラウマから心を病み、自傷、摂食障害、うつ病などに陥ることもある。

 親は大金を受験に投資したという意識があるぶん、子供がこうなった現実を受け入れられず、責任をなすりつけ合う。それが家庭環境をさらに悪化させる。

 このような家庭崩壊が離婚に至るプロセスについては、ぜひ漫画『教育虐待』を読んでいただきたい。そこに子供に受験をさせる親にとって盲点となりうるポイントがあるからだ。

 本来、中学受験は子供の未来の幸せを願って行われるものだ。だが、行き過ぎた受験の果てに家庭が崩壊すれば、たとえ受験が成功してもそれは悲しい記憶にしかならない。

 先の弁護士は話す。

「夫婦の中には中学受験が終わった後、学費や大学受験のために仮面夫婦を何年かつづけてから離婚するところも少なくありません。そういう家庭で育った子供は、夫婦のゆがみをずっと見続けているので影がある印象です」

 漫画『教育虐待』に描かれているのは、輝かしいはずの未来が影となった子供たちの姿なのである。

石井光太(いしい こうた)
1977年、東京生まれ。2021年『こどもホスピスの奇跡』で新潮ドキュメント賞を受賞。主な著書に『遺体 震災、津波の果てに』『「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち』『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』『ルポ 誰が国語力を殺すのか』『教育虐待 子供を壊す「教育熱心」な親たち』など。『ぼくたちはなぜ、学校へ行くのか。マララ・ユスフザイさんの国連演説から考える』など児童書も多い。『ルポ スマホ育児が子供を壊す』(新潮社)はロングセラーとなっている。

デイリー新潮編集部

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