“国宝なのに屋根がトタン葺き”奈良時代創建「室生寺」のクラウドファンディングが話題…数多の「国宝」「重要文化財」を擁する名刹を悩ませる“保護・修復”という難題
博物館の収蔵庫のスペース不足に伴う資料破棄、戦後に建築されたモダニズム建築の保存など、文化財の保護にまつわる議論が様々な場面で話題になっている。しかし、国の財政難の影響で、国宝・重要文化財に指定された文化財であっても、補助金がすぐに届くわけではない。緊急度が決して高くない修復は、順番待ちになっているといわれる。
修理が決定してからも、所有者には大きな負担がのしかかる。文化財は、そもそも長い年月を経ているために定期的な修理が不可欠だ。しかし、国宝に指定されたといっても、国や自治体がそれにかかる費用を全額負担してくれるわけでもない。その一部は、所有者が負担しなければならないのだ。
文化財の修復には専門の技術者が従事し、専用の材料を使用して行われる。そのため、大規模な建築の解体修理や、屋根の全面葺き替えなどの場合は、所有者が負担する金額が数千万円に達することも少なくない。これは歴史ある寺院・神社にとっても大きな負担になっており、拝観料だけでは到底賄えない額である。【取材・文=山内貴範】
【応急処置】室生寺にある国宝「金堂」のトタン葺きの屋根の様子
修理は所有者の負担が大きい
奈良県宇陀市にある室生寺は、奈良時代に創建されたといわれる寺院で、高野山が女人禁制であった時代から女性にも門戸を開いてきた。さらに、数多くの国宝・重要文化財を擁することで知られる。建築や仏像には日本美術史上、著名なものも多く、そのうちのいくつかは日本史の教科書に写真入りで掲載されているほどだ。
そんな室生寺が、国宝「金堂」「五重塔」の修復のために6月22日までクラウドファンディングを実施している。目的は、老朽化した屋根の葺き替えや解体修理の費用を募るというものである。なかでも金堂は平安時代を代表する名建築だが、なんと、その屋根はここ数年、応急処置のために“トタン葺き”になっていたのである。
近年、文化財保護や修復のためにクラウドファンディングを実施する寺院や博物館が増えている。SNSでは、「国がもっと費用を出すべきだ」と非難の声が上がることも多いが、一方で、多額の寄付が寄せられていることは、それだけ文化財への関心が高まっているといえよう。室生寺の教化広報執事・山岡淳雄氏に話を聞いた。
負担金が1億円になる見込み
――室生寺は全国有数の文化財の宝庫です。どのような経緯でクラウドファンディングを実施したのでしょうか。
山岡:当寺は数多くの文化財を収蔵していますが、なかでも国宝に指定されている五重塔と金堂は、象徴とも呼べる存在です。しかしながら、当寺は山岳寺院であり、山の裾野に境内が広がっているため、常に厳しい自然環境に晒されています。特に、風雨が直接当たる建物の屋根の傷みは避けられません。
そのため、五重塔と金堂の修復事業に着手することになりましたが、国や県からの補助はあるものの、当寺の負担金は約1億円以上になります。現在、金堂は特に屋根の傷みが激しく、応急処置で凌いでいる状況であり、一刻も早い修復に着手すべく、クラウドファンディングを実施する運びとなりました。
――私が拝観した際、国宝の金堂がトタン葺きになっていたのには衝撃を受けました。
山岡:トタン葺きにしたのは、10年くらい前からです。金堂の屋根はもともと杮葺きなのです。しかし、周囲に木が多いため、屋根に枝が刺さったりすることが多々ありました。そのため傷んだところから部分修理をして凌いでいたのですが、時間が経つと修理した箇所から雨がしみ込んでくるようになったのです。
そのため、部分修理ではなく本格的な全体修理を行う必要が出てきましたが、その実施までに全面的にトタンを葺いておくことになったのです。今回の修復事業で、もとの杮葺きに戻す予定になっています。
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