『スマホが脳を「破壊」する』の著者が、あえて“スマホで脳トレ”アプリを手がけた理由 東北大学・川島隆太教授が明かした「毒を以て毒を制す」の意味
毒を以て毒を制す
それなのに、よりによって、なぜスマホで脳トレなのか? 私は、よく冗談で「毒を以て毒を制す」と表現しています。スマホゲームをしている時、多くの人の脳内では前頭前野がほとんど働いていません。私たちの脳トレが普通のゲームと違うのは、ほぼリアルタイムで前頭前野をモニタリングし、プレイ中に実際に脳が活性化することを確かめながら制作している点です。
私の研究室では、近赤外光を用いた特殊なセンサーによって、前頭前野の活性化の度合いを測定しています。脳の活動が活発な部位ではヘモグロビンが増加します。近赤外光は人体組織を通り抜ける一方でヘモグロビンには吸収されるという性質を利用して、跳ね返ってくる光の量によって脳活動を可視化するのです。特定部位が活性化するということは、その部位が司る機能が数秒前に使用されたことを示唆します。
かつては、その近赤外光センサーが非常に高価で大掛かりだったため、限られた研究室でしか使用することができませんでした。しかし、長年の研究開発の結果、センサーを超小型化し量産することに成功しました。その結果、個人が自宅で気軽に、脳活動をリアルタイムでモニターしながら脳トレができる時代になったのです。
あなた自身の脳からリアルタイムでフィードバックをもらい、確実に前頭前野を活性化させ続ける。専門的には「ニューロフィードバック」と呼ばれていますが、この技術はスマホを使った脳トレと相性が良い。額に取り付けた小型センサーとスマホのアプリをBluetoothで接続し、前頭前野に常に適切な負荷が掛かり続けるように、アプリが自動的にゲームの内容や難度を調整できるからです。これこそが、2026年現在の最新にして最強の脳トレです。
しかも、「ニューロフィードバック」には様々な拡張性があります。ただ脳の老化を防ぐだけでなく、子供や若い人の能力開発にも活用できる可能性があるのです。
例えば、論文化はしていませんが、受験生たちにセンサーを着けて勉強してもらう実験をしたことがあります。勉強に集中している時と集中していない時で脳活動が変化するので、被験者には、自分の前頭前野の動きをモニタリングしながら「どういう時に集中が高まるか」を試行錯誤してもらいます。
最終的にそれぞれ自分なりの集中方法を見つけるのですが、最も多かった共通項は「机の周りを整理整頓すること」でした。しかも、自ら実体験してそれを発見した子供たちは、その後も自分に合ったメソッドとして納得して取り入れるようになるのです。
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新潮QUEでは、川島教授のロングインタビュー【ブームから20年「脳トレ」の最先端 前頭前野を活性化する「ニューロフィードバック」の秘密】を含む特集企画『脳を鍛える』を公開中。
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