実は“SNSを利用しない”ほうが得策? 「貴重な建築物の保存運動」を成功させる4つのポイント…「ネット上の他人」よりも「近所の住人」の心を掴むことの意義
異なる意見を排除しない
――そしてこれが、運動をやるうえでおそらくもっとも難しいと思うのですが、異なる意見を排除しないことですね。主催者や幹部は、何かと自分に逆らわない人で周りを固めたがる傾向にあります。
A:他の運動を見たところ、内部の人がものすごくワンマンで、自分の考えに従わない人は許さないような運営をしているケースがありました。少しでも異なることを言っただけで、裏切り者扱いされてしまうような。それでは、風通しの良い組織にはなりませんよね。
――私はある運動を抜けた人に話を聞いたのですが、内部の人たちが主宰者に「こう改善したほうがいいのでは」とアイディアを出したら、「俺に逆らうのか!」と言われたそうです。結局、運動は空中分解したようですが……。
A:常に相手の反応ばかり意識してしまい、内部で何も声を上げることができない空気感は、よくないですよね。
あと、身内は言うまでもありませんが、対抗勢力になっている政治家など、意見が異なる立場の人を攻撃しないことも大事です。一般人に対して、「こんなこともわからないのか」「この建物の価値がわからないなんて、文化的民度が低い」みたいに言う人って、ネットにたくさんいるじゃないですか。
――いますね。
A:そういう上から目線だと、ライトな層は見下されているかのように思ってしまい、運動に参加しようなどとはゆめゆめ思わないでしょう。繰り返しますが、最終的にはライトな層の支持を集めないと、どんな社会運動であってもうまくいかない。自分たちはインテリなんだ、という雰囲気を出さないことは大事です。
組織の風通しをよくするには
――話が少し戻りますが、先ほどのお話に出た、風通しの良さは組織運営のためにもっとも大事だと思いました。
A:私も運動をやってみてわかりましたが、頭数を揃えるだけじゃダメなんですよね。メンバーも自分の意見を聞いてもらえないとフラストレーションがたまってしまい、熱心に活動しなくなるでしょう。企業でも同じことが言えると思いますが、上の人に忖度して意見を言えない組織はうまくいきません。
どんな意見でも闊達に言い合える組織にしたほうがいいんです。異なる意見を言う人を排斥するのではなく、そういった人の意見こそ有益と考えるなど、ポジティブな感情を持つことが大事だと思います。運動は楽しくできることが一番なのですから。
――みんなで楽しみながら運動すると。
A:もともと、運動を始める人たちって、社会全体からするとニッチな存在だと思います。だからこそ、加わったメンバーは全員仲間だし、仲間内での小さな声を拾い上げることは大事だと思います。そして、組織の雰囲気は、暗いよりも楽しいほうがいいですよね。
――目からうろこです。個人的には、Aさんがもっと表に出て、この成功体験を伝えてほしいと思うのですが……。
A:それは勘弁してください。私はあくまでも地元の建物が好きなだけの一般人です。活動家やコンサルとして有名になろうなどとは考えていませんし、表に出て、議論をしたりすることは好みません。ましてや、ネット上でバッシングを受けるのは嫌です(笑)。
だから表に出ることはしませんが、私の話が、これから社会運動を始めようという人の役に立てばいいな、と思っています。
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