阪神・森下翔太が4年目で初退場 名選手たちを襲った“判定への怒り”の代償

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踏んだり蹴ったり

 前出の落合と同じようなシチュエーションでプロ初退場を記録したのが、広島選手時代の新井貴浩だ。

 2003年6月5日の巨人戦、広島が6対5と逆転した直後の9回表1死一塁、巨人は阿部慎之助の右前安打で、一塁走者・斉藤宜之が三塁を狙った。

 だが、ライト・木村拓也の返球は、サード・新井のグラブにすっぽり収まり、斉藤はそのグラブ目がけてスライディングしていく形になった。VTRにも新井が斉藤の右足にタッチする瞬間がはっきり映っており、誰が見てもアウトだった。

 ところが、吉本文弘三塁塁審の判定は「セーフ!」。“誤審”に怒りを爆発させた新井は同塁審の胸を小突き、退場を宣告されてしまった。

 実は、新井が怒ったのには伏線があった。この日は巨人有利の判定が相次いだばかりでなく、8回には広島の先発・高橋建も退場処分を受けていた。

 降板の際にボールボーイへの返球がバックネット前にいた谷博球審の約2メートル横を通過したことから、「かなりのスピードボールをダイレクトに(球審に向かって)投げた」という吉本塁審の証言がきっかけで、審判への侮辱行為と取られたのだ。

 そんなあと味の悪い事件の余韻も覚めやらぬときに、今度は三塁タッチアウトをセーフにされたので、ふだんは温厚な新井も堪忍袋の緒が切れてしまったようだ。

 これが新井にとって現役20年間で唯一の退場劇だが、1試合出場停止処分まで受け、踏んだり蹴ったりだった。

 リクエスト制が導入された現在では、判定が覆った可能性も高く、落合、新井ともに退場になることはなかったかもしれない。

暴れん坊伝説

 最後は1試合で2度退場も含むNPB史上最多の退場14回を記録した“退場王”タフィ・ローズにご登場願おう。記念すべき来日初退場は、近鉄時代の1997年4月19日の西武戦だった。

 同点の4回、フルカウントから西口文也の内角低めを見逃し三振に取られたローズは、激しい剣幕で中村稔球審に詰め寄ったが、侮辱的発言があったとして、来日2年目の初退場となった。

 収まらないローズは、ベンチやロッカーでバットを持って暴れ、鉄扉をへこませるなどのご乱行に及んだ。これが“暴れん坊伝説”の幕開けだった。

 その後も毎年のように退場処分を受け、オリックス時代の2008年5月17日のロッテ戦では、三振に倒れた直後、「振り向いて何か言ったときの顔が侮辱行為と感じた」という前代未聞の“お前の顔が侮辱”認定で、通算13度目の退場処分を受けた。

 14回中11回までがストライク判定に抗議してのもので、退場歴の多さから“累犯”として基準が厳しくなったとも解釈できる。

 ストライク、ボールの判定は、リクエスト対象外である。今季MLBで本格導入されたABSシステム(ロボット審判)について、先月末、日本プロ野球選手会がポジティブに捉えている選手もいることを明らかにしたが、実現にはまだ時間がかかりそうだ。

 現時点では、判定に抗議しても覆ることはないし、場合によっては、今回の森下のように退場処分を受けることもある。

“口は禍の元”にならぬよう、たとえ判定に納得がいかなくても、じっと我慢の子でいるのが得策のようだ。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘! 激突! 東都大学野球』(ビジネス社)

デイリー新潮編集部

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