訴訟に発展 “国宝の城”を台無しにする高層マンション「景観ハラスメント」の深刻度

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もはや世界遺産の候補にもならない

 さて、松江の事例である。件のマンションは松江城の南東約200メートル、現在は県庁が建つ旧三の丸のすぐ東側で、かつて重臣の屋敷が建ち並んでいた殿町に位置する。そしてこの土地自体が、2007年に策定された松江市の景観条例によって、景観計画重点区域に定められているという。

 そこに高層マンションが建設される計画が明らかになったのは2023年9月で、すぐに市民らによる反対運動が起き、前述の訴訟の原告らが参加する「まつえ/風景会議」が発足した。そして、上定昭仁市長への要望活動や新聞への意見広告、署名活動などが重ねられてきた。同時に、大阪の京阪電鉄不動産を訪問し、「松江市に土地を売却してほしい」「すぐれた眺望をもつ松江市有地と交換してほしい」などと提案したが、一切応じてもらえなかったという。

 そうこうするうちに松江市の景観審議会も、このマンションが「景観基準を満たす」と答申してしまった。というのも、それまで松江市には、景観計画がどうこうといいつつも、景観を守るための主な基準が「天守から見える東西南北の山の稜線を妨げない」というものしかなく、それをもとに判断されてしまったのである。

 さしもの上定市長も、2024年3月には「松江城天守を上回る高さであるなど、松江らしい景観を保全する観点から望ましくない」と回答するようになり、市長みずから、事業者に高さの引き下げを要望したが、受け入れられなかった。

 不思議なのは、松江市の意識である。松江城天守は長く重要文化財だったが、松浦正敬市長(当時)がみずから、国宝化に向けた市民運動を醸成しようと提唱し、市に国宝化推進室を設置。多方面から調査や活動を重ねた結果、2015年7月8日に国宝に指定された。その後は松江市として、松江城の世界文化遺産への登録をめざしている。

 それなのにどうして松江市は、かけがえのない財産の価値をみずから毀損するマンション建設を許可してしまったのか。とりわけ世界文化遺産は、周囲に景観を守るためのバッファーゾーン(緩衝地帯)の設置が求められる。まさにそのエリアに、天守より高いマンションが建ったのだから、もはや推薦候補にすら選ばれないのではないだろうか。

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