3.5兆円まで膨らんだ事業費にも疑念の声…「北海道新幹線」談合疑惑の闇に“森本検察”はどう斬り込むか?

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旧拓銀の不正融資で実績も

「北陸、リニア中央と、刑事事件化が進んだ新幹線は、次代に向けた国内最大級の大型インフラ工事です。不正の徹底排除に向けた公取委と検察の協力関係は、確固たるものとなっていると言っていい。その関係を盤石にしたのは森本次官と言ってもいい」

 同弁護士はこう語った上で「北海道新幹線は、工事現場は北海道だが、企業は東京を含め全国各地。札幌地検の特刑部でどこまでやれるのか」とも指摘する。

 特別刑事部(特刑部)は東京、大阪に続く「第3の特捜部」として名古屋地検特捜部が設置された際、合わせて札幌、仙台、千葉、さいたま、横浜、神戸、京都、高松、広島、福岡の10地検に置かれたいわば“準特捜部”だ。

 札幌地検特刑部はかつて、バブル崩壊後の不良債権処理で大手都銀の一角を占めた旧北海道拓殖銀行の経営陣による特別背任事件を北海道警と合同で立件した実績はある。しかし、東京地検特捜部が手掛けたこれまで2件の新幹線談合は、いずれも公取委と合同で強制調査に入ることにより着手している。今回は、公取委の任意の立ち入り検査がスタートとなっているため、状況が異なる面もあるのだ。

 しかし、ある公取委OBはこう打ち明ける。

「そもそも東京地検以外の地検と組んだ刑事事件は、まだ2件しかなく、公取委に強制調査権(犯則調査権)が2006年に付与されてから20年が過ぎたが、検察との連携捜査の“手法”は手探り状態が続いていると言っていい」

 事実、東京以外が立件した事件は過去に、大阪地検特捜部の汚泥・し尿処理施設談合と、名古屋地検特捜部の名古屋市営地下鉄談合の2件のみだ。また独立行政法人「地域医療機能推進機構」が発注する医薬品の入札を巡り、医薬品卸大手4社が事前に受注調整を行っていた談合事件では当初、公取委が2019年11月に任意の立ち入り検査を実施。悪質性を確認した上で20年10月に東京地検特捜部と合同で家宅捜索(公取委は強制調査、特捜部は強制捜査)へと乗りだし、翌12月に公取委の刑事告発を踏まえて特捜部が独占禁止法違反の罪で法人3社と担当7人を立件している。

4地検の筆頭格という立場

 北海道新幹線の談合は医薬品談合と同じパターンで、東京地検が公取委の事前調査結果を精査し、その上で手堅く立件するというパターンだけでなく、特別刑事部が手掛ける初のケースにするという選択肢もある。

「そもそも公取委の告発先は、法律の規定で検事総長に一元化されています。総長の指示で東京地検特捜部から札幌地検特刑部に応援検事を派遣させるという手法も取り得るのです」(前出・同公取委OB)

 また、多くの地検が各都府県の県庁所在地に庁舎を構え、県域全体をテリトリーとする中、広大な面積を誇る北海道には道庁が所在する札幌市を拠点とする札幌地検に加え、函館地検、釧路地検、2001年に全国初の女性検事正が誕生することとなった旭川地検の計4地検がある。北海道内の地検の筆頭格に当たる札幌地検は、3地検から応援検事を招集しやすい環境にもある。

 5月の立ち入り検査後、北海道南部の各自治体から懸念の声が上がる中、函館市の大泉潤市長は定例記者会見で、談合疑惑を「大変残念」としつつ「一日も早い開業を望んでいる」と述べた。道内での新幹線の期待値や注目度は想像以上に高く、仮に一般事件の処理に停滞が生じたとしても、道内の地検がマンパワーを結集させることに必然性はある。何より、地域の経済を脅かす事件に対処するという特刑部の使命を果たす絶好の機会である。

 大阪地検特捜部の証拠改竄事件(2010年)後に始まった検察改革の中では、特捜検察の東京地検への一本化も取り沙汰された。前出・検察OBの弁護士は「だからこそ、各地に点在する特刑部が、検察捜査の有効なオプションとなり得るかの試金石にもなる。札幌地検には成果を期待したい」と話す。

 特捜検察が萎縮のスパイラルに封じ込められるのか、復活の突破口を開くのか――その意味でも見物ではある。

岡本純一(おかもと・じゅんいち)
ジャーナリスト。特捜検察の捜査解説や検察内部の暗闘劇など司法分野を中心に執筆。月刊誌「新潮45」(休刊中)では過去に「裏金太り『小沢一郎』が逮捕される日」や「なぜ『東京高検検事長』は小沢一郎を守ったか」などの特集記事を手掛けた。

デイリー新潮編集部

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