私大を4割減らすだけではとても足りない 早慶もMARCHも半分にしなければ生き残れない少子化の現実

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学生の取り合いをしている余地はない

 早慶に続く東京の有名大学「MARCH」、すなわち明治、青山学院、立教、中央、法政も、大学の規模を減らす前に、優秀な学生を確保するためのあらたな策を講じている。明治大学は今年4月から、男子校だった日本学園中学・高校を系列化し、共学の明治大学付属世田谷中学・高校としてリニューアルした。また、法政大学は2027年4月から、東京家政学院中学・高校を系列化し、法政大への推薦入学を増やそうとしている。

 ねらいは明白である。中高一貫校をMARCHの系列校にすれば、中学受験で人気校になって難易度が上昇する。そうして入学した優秀な生徒を、推薦で大学に入学させる。こうすれば、学力が一定以上の学生を大学に安定供給できる、というわけだ。

 いまはまだ大学が一定の規模を維持しつつ、こうして学生の取り合いをする余地があるかもしれない。だが、18歳人口はこれから3割も4割も減る。しかも、年間出生数が66万人台になるのは、国の予測より16年も速かったので、18歳人口が減少する速度も、国の試算をはるかに超える可能性が高い。若者の総数が激減する以上、「できる子」の絶対数も減る。おのずと取り合う子の学力も下がらざるをえない。

 早慶やMARCHなどの有名私大も、1学年の人数を2割、3割、4割と減らしていかないと、水準を維持できないのは明白である。早めに手を打たないと、わかりやすくいえば、早慶の学生の学力が以前のMARCHの学生並みに、MARCHの学生の学力が以前の日東駒専の学生の学力並みになる。こうして既存の私大の学力が負のスパイラルに巻き込まれたように低下し、研究水準や国際評価も下がりかねない。

私大の公立化は公費を無駄に使う弥縫策

 私大の総数を250ほど減らすのはいい。だが、その際、早慶やMARCHなどの有名私大を含めた、既存の私大の規模縮減もセットで行うべきである。今回発表されたのは財務省による数値目標だが、文科省も一緒に、人口減社会の見通しを示したうえで、適切な大学の数と規模について、早急に議論する必要がある。むろん、その際、東京大学をはじめとする国公立大学の規模縮減も議題に乗せる必要がある。

 大学間で学生の獲得競争をすること自体はいい。だが、それは大学の数も、各大学の規模も、若者の数に見合って適正であってこそ、はじめて有意義な競争ができる。現在の規模を維持したまま競争をしたところで、若者の数が足りないのだから、真っ当な競争にはなりえない。

 とにかく、大学の数も規模も維持できないという同じ土俵に立たないかぎり、大学の未来が失われてしまう。ところが、行政も大学も状況がまるで見えていないことに、愕然とさせられる事例もある。

 経営が厳しい私立大学を救済するために、地方自治体が公立大学化し、地方交付税を原資に運営しようという例がいくつかあるのだ。実際、不人気だった私大も、「国公立大学」という看板を獲得した途端に、志願者が増えることが多い。だが、くどいようだが、18歳人口が激減するなかで、そんなかたちで生き残りを図ったところで弥縫策にしかならない。しかも、本来なら淘汰されるべき私大に多くの公費が投じられるのだから、本末転倒である。

 とにかく1992年から50年で、18歳人口は3分の1になってしまう。それはもはや動かしようのない事実なのだから、正面から向き合うしかない。これから起きようとしていることは、その場しのぎの対処で乗り切れるほど甘い状況ではない。

香原斗志(かはら・とし)
音楽評論家・歴史評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。

デイリー新潮編集部

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